Appleは、インドネシアでの最新iPhone販売禁止を回避するため、同国政府に対し1000万ドルの現地投資を提案した。提案内容には、バンドゥンでの部品生産施設の設置が含まれ、これは現地サプライヤーとの連携で行われる予定である。
インドネシアでは現地生産を40%以上とする規定があり、Appleはこれに対し新たな投資提案を通じて関与強化を図る構えだ。同国のスマートフォン市場は約3億5000万台と巨大であり、Appleにとっても戦略的に重要な地域である。こうした現地調達義務は、GoogleやTikTokなど他の国際企業にも影響を与えており、インドネシア政府の強硬姿勢が注目されている。
Appleのインドネシアへの投資提案、その背景にある現地調達規制とは
インドネシア政府がiPhoneの販売を禁止した背景には、同国が掲げる現地調達義務がある。この規制では、スマートフォン製品の少なくとも40%を現地で生産・調達することが求められている。インドネシアは、他国企業に対し国内産業の育成や雇用創出を促進するため、この厳格な基準を設けている。
Appleは今回、1000万ドルの追加投資を通じて、ジャカルタの南東に位置するバンドゥンでの生産拠点設置を提案。現地での部品生産を進めることで、政府の規制に対応しつつ、インドネシア市場でのiPhone販売再開を目指している。
この規制はAppleだけでなく、GoogleやTikTokなど他の多国籍企業にも適用されている。例えば、GoogleもPixel端末に関して同様の制約を受けており、インドネシア政府の要求に従わなかったため販売が一時中断された経緯がある。
インドネシアの厳しい政策は、同国が約2億7000万人の人口を抱える市場で、国際企業が一方的に利益を上げるのを防ぐ目的があるとされる。Bloombergの報道によると、Appleの現地法人も現在の基準に達していないとされ、インドネシア政府は引き続き多国籍企業の対応を注視している。
インドネシア市場の重要性とAppleのさらなる戦略的狙い
インドネシアのスマートフォン市場規模は約3億5000万台とされ、巨大な成長ポテンシャルを秘めている。Appleにとっても、この市場は新規顧客の開拓やブランドのプレゼンスを高めるうえで重要な地域であり、わずかな投資額であっても市場への関与を深めることが可能となる。
Appleは、現地のサプライチェーンを強化することで、調達規制をクリアするのみならず、将来的にはインドネシアを東南アジア全体への供給拠点とする可能性も見据えていると考えられる。
こうしたAppleの動きは、他の企業にとってもモデルケースとなる可能性がある。多国籍企業がインドネシア市場で競争力を維持するには、同国政府の規制に応じつつ、現地との共存を模索する必要がある。インドネシアの政策が他の東南アジア諸国にも影響を及ぼすことを踏まえれば、Appleの対応が東南アジア全体におけるグローバル企業の戦略の指針となるかもしれない。
インドネシア政府の厳格な姿勢と国際企業への影響
インドネシア政府は、国際企業に対して現地産業を活性化することを求める厳しい立場を貫いている。この方針は、プラボウォ・スビアント大統領が前政権から引き継いだものであり、国内の経済発展を主眼としている。
最近では、TikTokの親会社ByteDanceにも圧力をかけ、現地の電子商取引企業と1.5億ドルの投資契約を締結させた。このように、インドネシア政府は多国籍企業からの直接投資を引き出し、地元産業を保護しつつ新たな雇用を生み出すという構図を追求している。
こうした政府の姿勢は、多国籍企業がインドネシアに参入する際のハードルとなる可能性もある。特に、中国製品を抑制し、国内製造を支援する政策は、他の新興国とも共通の課題である。Appleをはじめとする企業にとっては、現地市場に適応することで利益を得る一方で、特定の市場政策が長期的なビジネス戦略にどのような影響を及ぼすかも慎重に見極める必要があるだろう。