25年間にわたり米国の主要株価指数であるダウ・ジョーンズ工業株30種平均に名を連ねてきたインテルが、AI分野で急成長を遂げるエヌビディアに取って代わられる形で指数から除外された。過去1年の間にインテルの株価は約半分まで急落し、四半期ごとの損失が増加する状況に陥っている。
今後も業績回復の兆しが見えなければ、2024年末には累積損失が200億ドルを超える見込みであり、半導体業界における地位の低下は避けられない。しかし、インテルは米国政府の支援のもと製造基盤の強化を進めており、軍需契約など一部の分野では競争力を維持しているため、事業の完全な消滅には至らないと予想される。
エヌビディアの指数追加が示すAI需要の急成長
AI分野でのエヌビディアの影響力は、同社がダウ・ジョーンズ工業株30種平均に加えられたことで一段と強調された。エヌビディアはAIとデータセンター向けのグラフィックス処理能力に特化し、その成長戦略が市場に高く評価されている。
特に生成AIや機械学習を支えるために求められる半導体の需要が急増しており、これが同社の事業を押し上げる一因となっている。インテルが長年占めていた半導体セクターのポジションを譲り渡した背景には、エヌビディアの革新的な製品と技術開発があると考えられる。
また、S&Pダウ・ジョーンズが「半導体業界への代表的なエクスポージャーの確保」を意図してエヌビディアを選んだことは、同社がAIとデータセンターの分野で市場の主要な動力源として認識されていることを示唆する。エヌビディアの動向を観察することは、今後もAI業界の成長や半導体技術の進化を理解するうえで不可欠である。
インテルの戦略的課題と今後の見通し
インテルは、デスクトッププロセッサ「Arrow Lake」の評価が期待を下回るなど、主力製品での競争力低下が目立っている。加えて、AMDやエヌビディアがデータセンターおよびAI市場で強固な地位を築く中、インテルの収益構造はかつての安定を失っている。
特にインテルのゲーミング向けGPU「Alchemist」は収益に寄与できなかったことから、今後もゲーム分野への多額の投資は難しい状況にある。さらに、インテルは製造拠点の整備や一部プロジェクトの撤回により、財務的な安定化を模索しているが、TSMCへの製造依存が不可避な状況にある。
こうした動向は、インテルが次世代チップの開発を進めるうえで一定の制約となる可能性がある。同社は米国政府の支援策であるCHIPS法の恩恵を受ける見込みだが、市場の動向と競争の激化により、迅速かつ的確な改革が求められているといえよう。
インテルの存続に必要な戦略的転換と競争の意義
インテルの市場シェアは依然としてCPU分野で大きな影響力を持っているが、収益減少と出費過多が長期的な課題である。収益増加にはコスト管理と利益を生まない部門の縮小が必須であり、競争環境の変化に合わせた迅速な対応が不可欠だ。特にゲームやデータセンター向け製品の分野でエヌビディアやAMDに遅れを取るインテルにとって、今後の持続的な成長には新たな収益源の発掘が鍵となる。
また、市場における競争は消費者に価格メリットをもたらすため、インテルの回復と活躍は業界全体の活性化にも寄与する。AMDの復活が示すように、企業が厳しい状況から復帰することは不可能ではないが、インテルにとってもこの過渡期における戦略転換が重要である。