編集部
富士通とAMDは、AIや高性能コンピューティング（HPC）分野での技術革新を加速するための戦略的パートナーシップを発表した。この提携により、富士通のARMベースのプロセッサ技術とAMDの先進GPU技術を組み合わせ、エネルギー効率が高く、オープンソース対応のプラットフォーム構築が目指される。
中心に位置するのは、2027年のリリースを見込む「Monaka」チップで、288コア、2nmプロセス、PCIe 6.0などの最新技術を搭載し、将来のスーパーコンピュータ「FugakuNEXT」の基盤となる可能性も示唆されている。AMDのインスティンクトアクセラレータとROCmソフトウェアスタックを通じ、企業のデータセンターにおけるAI導入のコスト効率化とスケーラビリティ向上が図られる見通しである。
富士通とAMDが生み出す次世代プロセッサ「Monaka」の革新性
富士通とAMDの共同開発によって登場する「Monaka」チップは、288コア構成、2nmプロセス、最新のArmv9-Aアーキテクチャを採用し、次世代のHPC（高性能コンピューティング）とAIプラットフォームに革新をもたらす見込みである。特に、PCIe 6.0（CXL3.0）によるスケーラビリティの向上は、従来のハイバンド幅メモリを用いずにシステムの柔軟性と接続性を確保するための重要な要素であり、データ処理における性能と効率を飛躍的に向上させるだろう。
また、富士通が開発したスーパーコンピュータ「富岳」の後継として計画される「FugakuNEXT」においても、この「Monaka」技術の基盤が活用される可能性が示唆されている。このような技術的革新は、特にエネルギー効率の向上や環境負荷の低減に貢献し、これまでのプロセッサの限界を超える新たなアーキテクチャとして期待される。
さらに、同チップは2027年のリリースを予定しており、最先端のプロセッサ技術がグローバル市場で広く普及する可能性を持つ。その一方で、これが他社製プロセッサとの差別化要因として機能し、富士通とAMDが高性能データセンター市場での競争力を強化する戦略的役割を果たすことが予想される。
AI活用の加速に向けたAMDの「インスティンクトアクセラレータ」との相乗効果
AMDは「Monaka」のパフォーマンスを最大限に引き出すため、同社のインスティンクトアクセラレータを提供し、大規模なAIワークロードを効率的に処理できる環境を構築する。インスティンクトアクセラレータは、データセンターにおけるAIおよびHPC（高性能コンピューティング）向けの特化したGPU技術で、AI計算の高速化とデータ処理のスピードアップを実現する。
このアクセラレータが「Monaka」と組み合わされることで、AI推論からトレーニングまで幅広いワークロードをカバーし、企業がコストを抑えつつデータセンターの運用効率を向上させる可能性がある。また、AMDはこの提携を通じて、AI開発と実装の過程で、ROCm（Radeon Open Compute）ソフトウェアスタックと富士通の独自ソフトウェアを組み合わせ、エコシステムの拡充を目指す。
この統合環境は、オープンソースの強みを生かしながらAIおよびHPCのアプリケーション開発を加速させる点で注目される。また、同ソフトウェアスタックの活用により、顧客は自社のワークフローに合わせた柔軟なシステム構成を可能とし、AI導入のハードルを下げることが期待される。これにより、AMDと富士通の連携は、より幅広い企業がAI技術を活用する未来を見据えたものと言えよう。
富士通とAMDの提携が示すオープンソース・エコシステムの展望
今回の提携では、富士通とAMDが共にオープンソース技術を積極的に活用する姿勢が顕著に表れている。特に、ROCmソフトウェアスタックを通じてエコシステムの拡大に注力するAMDと、ARMベースの「Monaka」によってオープンアーキテクチャを追求する富士通の協力関係は、業界に新たなオープンソースの標準を確立する可能性がある。
このオープンソースへの取り組みは、エネルギー効率やシステムの柔軟性に加え、コスト効率を重視する顧客にとっても大きなメリットとなる。事実、ヴィヴェーク・マハジャン富士通CTOも、AMDの先進GPU技術と富士通の低消費電力プロセッサを組み合わせることで、多くの企業がデータセンターの電力消費を削減しつつAI技術を活用できる環境を提供するとコメントしている。
これは、特に環境負荷の低減が求められる現代のデータセンターにおいて、重要な一歩といえよう。このように、富士通とAMDの提携は、データセンターにおけるコスト効率性や柔軟性を高めるだけでなく、オープンソースエコシステムの発展を通じて、より多くの企業が容易に最先端技術を導入できる未来を築きつつあるといえる。