AMDは2024年第3四半期において、デスクトップ市場でのシェアを前年の19.2%から28.7%に引き上げ、x86プロセッサ市場でIntelに迫る成長を遂げた。Mercury Researchによると、AMDは在庫調整の影響を受けずに季節的なデスクトップ需要を取り込み、さらにモバイルCPU分野でもシェアを拡大した。
一方、サーバー市場では、Intelの強固な地位に対してAMDのシェア増加はわずかにとどまっている。しかし、AMDはサーバーやIoT、ゲーム機向けセミカスタム製品を含む全体のx86市場で0.5%のシェアを増加させ、全体の25%に達した。市場全体でのシェア競争は、在庫調整やPC需要の変動を背景に依然として続いている。
デスクトップCPU市場でのシェア変動が示すPC業界の転換点
AMDのデスクトップCPU市場でのシェア拡大は、PC市場の構造変化を象徴している。Mercury Researchによると、AMDは第3四半期でIntelから約10ポイントのシェアを奪取し、デスクトップ領域で28.7%を達成した。この成長は、Intelが直面する在庫調整の影響を回避し、需要期に適切な供給を実現した結果である。在庫調整はPC業界全体に影響を及ぼしており、特にIntelが大手PCメーカーからの買い控えによる影響を受けている。
PC市場は過去の需要ピークから落ち着きを見せつつあり、メーカーは需要に応じた生産と在庫調整を進めている。この中でAMDが安定した出荷を維持している点は、今後の市場シェア争いにおいて大きな強みとなるだろう。また、デスクトップ市場の拡大はPC用途の変化も一因と考えられる。リモートワークの普及やゲーミングPCの需要増加により、性能重視のデスクトップ製品の人気が続いている。
AMDは、デスクトップユーザーのニーズに応える形でプロセッサ性能を高め、信頼を得つつあるといえよう。PC業界が低成長期に移行する中、需要に応じた供給を実現するAMDの戦略は、シェアのさらなる拡大につながる可能性がある。
サーバー市場での苦戦と今後の成長機会
AMDはデスクトップ市場でのシェア拡大を達成した一方、サーバー市場でのシェア増加は限定的であった。Mercury Researchによると、AMDのサーバー市場シェアは前年同期比で0.9%増加したのみで、現在24.2%にとどまっている。Intelのデータセンター向け製品が依然として根強い需要を持つ一方、AMDは期待されるほどの成長を遂げていない。
これは、IntelのXeon SPシリーズが企業向け市場で強固な地位を保っているためであると考えられる。しかし、データセンター市場は成長が続いており、AMDにも新たな機会が生まれる可能性がある。特にAI処理に適したハイパフォーマンスプロセッサの需要が今後増えることが予想されており、AMDはその分野での新製品開発を加速させている。
企業がより効率的なデータ処理を求める中、AMDがサーバー市場でのシェア拡大を図るには、競合にない付加価値や効率性をアピールする戦略が重要となるだろう。
モバイル分野におけるシェア拡大とIntelの在庫調整の影響
モバイルCPU市場においてもAMDはわずかながらシェアを伸ばしており、前年同期比で2.8%増加し、全体の22.3%を占めるに至った。モバイル市場ではIntelの在庫調整の影響が小さいため、デスクトップ市場ほどの顕著な変化はないものの、AMDの成長は一定の評価に値する。
Mercury Researchは、Intelの在庫削減がモバイル分野に波及しにくいと報告しており、これはIntelがモバイル製品で安定した出荷を維持している証拠でもある。モバイル市場におけるAMDのシェア拡大は、ノートPCユーザーの多様なニーズに対応した製品ラインの強化が一因と考えられる。特にゲーミングノートPCやクリエイター向けモデルなど、性能重視の需要に応える製品が市場で注目されている。
今後、AMDがモバイル市場でさらなる成長を目指すためには、バッテリー効率や高性能処理能力をさらに向上させ、Intelとの差別化を図ることが求められるであろう。