トランプ氏の大統領選勝利を受け、テスラ(NASDAQ: TSLA)の株価に対する強気な見通しが再び注目されている。ウェドブッシュのアナリスト、ダニエル・アイブス氏は、テスラの自動運転やAI技術が規制面でより友好的な環境の恩恵を受けることにより「ゲームチェンジャー」となると指摘。テスラの目標株価を400ドルに引き上げた。
トランプ政権下では電気自動車(EV)に対する税制インセンティブの撤廃が予想される一方、テスラは他社に比べ競争優位性を発揮しやすい状況となる可能性がある。中国からの安価なEVが関税引き上げで制限されれば、市場シェア維持にも寄与すると考えられる。
一方で米中関係の緊張が続けば、テスラにとって重要な中国市場に対して地政学的リスクも増大する。アイブス氏は、こうした要因がテスラの株価に強気と慎重の両方の見方を生み出していると述べている。
トランプ政権がもたらす規制緩和の可能性とテスラの戦略的優位性
トランプ氏の再選による規制環境の変化は、テスラにとって多大なメリットをもたらす可能性がある。ウェドブッシュ証券のアナリスト、ダニエル・アイブス氏によると、トランプ政権下での政策は、EV市場全体への支援策縮小により、テスラが自動車産業の枠を超えた先進技術分野で優位性を確保しやすくなるという。従来からのEVリベートや税制優遇策が撤廃されれば、テスラのように既に業界をリードする企業に有利に働く可能性があり、新興企業には一層の逆風が予想される。
また、米国における規制が緩和されることにより、テスラは自動運転やAIの導入スピードを加速させる意向である。特に、同社が推進する完全自動運転(FSD)技術は、法規制の柔軟性が高まることで、サイバーキャブなど新規事業分野の成長を後押しする展望が広がる。
テスラが政府の支援を必要としない状態で市場を拡大しようとする戦略は、同社の競争力と収益性をさらに強固にする要因となり得る。アイブス氏のコメントを引用すれば、「トランプ政権下の規制環境は、テスラにとって未来を切り拓くゲームチェンジャー」と言えよう。
中国市場における関税リスクとテスラのシェア維持戦略
一方で、米中貿易摩擦の再燃はテスラにとって中国市場でのリスク要因となる可能性がある。トランプ政権による中国からの輸入品に対する関税強化は、BYDやNioといった中国製EVの米国市場参入を制限する一方で、テスラが中国市場で抱えるリスクも拡大させる恐れがある。特に、中国市場はテスラの売上において重要な位置を占めているため、同国の報復措置が発動されれば、同社の利益構造に直接的な影響が及ぶことは避けられない。
ダニエル・アイブス氏は、テスラが中国との関係強化を図るための新たな交渉の場に関与する可能性があると指摘している。トランプ政権下での米中交渉において、イーロン・マスク氏が間接的に関与することは、テスラにとって重要な意義を持つだろう。こうした地政学的なリスクと交渉が同時進行する中で、テスラがいかにして市場シェアを維持しつつ、競争力を保つのかが注目される点である。
テスラ株価の先行きとアナリストによる多様な評価
テスラの株価が長期的にどのように推移するかについては、専門家の見解も分かれている。ウェドブッシュのアイブス氏は、トランプ政権下の政策変化によりテスラが恩恵を受け、目標株価を400ドルと強気に設定したが、多くのアナリストは慎重姿勢を崩していない。TipRanksのデータによれば、16人のアナリストがテスラ株をホールド、8人がセルと評価し、コンセンサスとして中立の立場を取っている。
テスラは、既存のEV市場を超えたAIや自動運転の分野においても巨額の成長ポテンシャルを秘めているが、市場は依然としてそのリスクと報酬を冷静に見極めようとしている。現在の株価が一部のアナリストに過大評価と見なされる中、トランプ政権の影響が今後のテスラの業績にどのような形で表れるかが重要な焦点となるだろう。