2024年の米大統領選でトランプが再選を果たしたことにより、Palantir Technologiesの株価は急上昇している。40%以上の上昇を見せた同社は、政府機関や法執行機関向けに高度なデータ分析ソリューションを提供し続けており、過去にはテロ対策や移民取締りにおいて米国政府の任務を支援した実績を持つ。そのため、トランプの移民政策が再び強化される可能性を背景に、Palantirの収益拡大が期待されている。

一方で、長期的な成長性や「ミリオネアメーカー」としての魅力は過剰に評価されているとの指摘もある。同社の株価収益率は143と高水準に達し、現実的な価値を反映しているとは言い難い。2024年の陸軍との大型契約や米国政府との連携強化による収益増加の期待もあるが、今後の成長を見据えた慎重な視点が求められる。

トランプ政権の移民政策とPalantirの連携強化の可能性

Palantir Technologiesは、トランプ政権の再選による移民政策の強化とともに、米国政府との連携を再び強化する可能性が浮上している。2000年代の「対テロ戦争」以降、同社は法執行機関向けにビッグデータ解析ソリューションを提供し、特に不法移民のプロファイリングや強制退去支援において高い成果を挙げた。Slate誌によれば、Palantirのソフトウェアは各種政府機関のデータベースから情報を収集・分析し、不法移民の疑いのある人物を特定するなど、精度の高いデータ解析能力を発揮している。

トランプの再選後、移民政策はその選挙キャンペーンの重要な柱のひとつとされており、投資家やアナリストはPalantirが新たな業務を受注する可能性に期待を寄せている。しかし、前政権下でもPalantirが移民関係で得た収益は限定的であり、ICEとの契約からの収益も一部に過ぎない。

よって、仮に業務が拡大したとしても、同社の収益全体を大きく押し上げるには至らない可能性も指摘されている。Palantirが今後の成長においてさらに注力すべき領域は、他の大型契約や新たな技術開発にあり、政府との連携強化が同社の将来を左右する全てではないと考えられる。

業績を支えるAI技術と米国政府向けの収益構造

Palantirの成長を支えているのは、AI技術を核としたデータ解析能力であり、その技術は米国政府や企業からの高い評価を受けている。2024年の米国陸軍との契約「Maven Smart System」の例では、AIを活用し、軍事システムのターゲティング精度を高めることを目的としたソリューションを提供しており、4億8000万ドルという大型契約の締結に至っている。

こうした米国政府向けの契約は、同社の売上にとって極めて重要であり、第3四半期の収益の44%が米国政府からのものである。

一方で、同社の予想株価収益率(P/E)は143に達しており、S&P 500やNvidiaと比較しても著しく高水準である。これにより、投資家はPalantirの収益性の継続を過大評価している可能性が指摘される。特に同社のAI技術は、今後の市場競争が激化する分野であり、他のAI業界のリーダーが同様の技術に注力する中、Palantirが持続的な成長を確保するためには、さらなる技術革新が求められるだろう。現状の契約に依存しすぎず、多角的な収益源の開拓が必要とされる。

過去の成長実績と将来の課題 新規投資家への警鐘

Palantirは過去数年間にわたり株価が530%以上も上昇し、多くの富を生み出してきた。しかし、同社の「ミリオネアメーカー」としての魅力は、株価が急上昇する一方で、今後の成長が現在の高い期待値に見合うかどうかは慎重な判断が求められる。特に、The Motley Foolが指摘するように、株価の上昇は必ずしも基礎的価値に基づくものではなく、ニュースによる期待の高まりに依存している面も少なくない。

一部のアナリストは、新規投資家がPalantir株を購入する際、売却時の流動性リスクを考慮すべきだと警告している。現状の株価水準を支えるには、持続的な成長と堅実な収益確保が不可欠であり、期待に反して収益が伸び悩むような場合、株価が急落する可能性もある。Palantirが「ミリオネアメーカー」となり得るか否かは、短期的なブームに左右されない安定した成長を築けるかにかかっているといえよう。

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