編集部
Hewlett Packard Enterprise（HPE）は、最新のCray EXシステムに224台のNvidia Blackwell GPUを搭載することで、スーパーコンピュータ分野における高性能計算（HPC）とAI処理の能力をさらに強化すると発表した。
このシステムは、8,064個のGrace CPUコアと224台のBlackwell GPUを含む設計により、FP64精度で10ペタフロップス以上、FP4精度で4.4エクサフロップスの計算性能を実現する見込みである。冷却方式にはファンレスの液冷システムを採用し、300kWを超える消費電力に対応。ネットワークもSlingshot 400シリーズにアップグレードされ、400Gbpsの帯域幅により高速通信を確保する。
出荷は2025年後半が予定されており、従来のHPCシステムやエンタープライズ向けのProLiantサーバーシリーズと並行してHPEの高密度かつ高性能なソリューションが提供されることとなる。
HPEのCray EXシステムが実現する高密度計算性能の背景
Hewlett Packard Enterprise（HPE）の最新Cray EXシステムは、次世代のスーパーコンピューティング技術を結集し、特に高密度計算性能を追求するシステムとして注目されている。HPEは、このシステムに224台のNvidia Blackwell GPUを搭載し、10ペタフロップス以上のFP64精度のHPC処理能力を実現するとしている。この性能は、各キャビネットに配置された8,064個のGrace CPUコアと合わせることで可能となり、これにより大規模データ処理に特化した従来のコンピューティングアーキテクチャと一線を画すものとなっている。
さらに、EX154nアクセラレーターブレードに内蔵される2台の2.7kWのGrace Blackwellスーパーシップ（GB200）は、それぞれ2台のBlackwell GPUと72コアのArm CPUを備え、NvidiaのNVL4参照構成によってシステム全体が強力に相互接続されている。このような高密度アーキテクチャは、HPC分野においてさらなる処理速度と効率性を提供するものと考えられ、特に機械学習やデータ解析における演算負荷が大きい業務において、顕著な優位性を示す可能性がある。
HPEの戦略的な設計によって、従来のCPUのみのシステムを凌駕する次世代の計算能力が提供される点が大きな特徴である。
次世代冷却技術とSlingshot 400の革新
HPEはCray EXの高密度アーキテクチャに合わせ、冷却技術においても革新を進めている。最新のBlackwellブレードは液冷システムとファンレス設計を採用し、1ラックあたり300kWを超える電力消費を冷却する仕組みが導入されている。液冷により効率的な熱管理が実現される一方で、ファンレス設計によって物理的な静音性も高められ、これによりシステムの物理的寿命も延長されることが期待される。
特に、ハードウェアの密度が高まるにつれて冷却の重要性は増し、液冷技術の適用は不可欠な要素となっている。また、通信帯域を担うSlingshot 400シリーズは、従来の200 Gbpsから400 Gbpsへと大幅な増強が図られており、これにより最新のEthernetやInfiniBandネットワーキングと同等の性能を発揮することができる。
このアップグレードによって、システム全体のデータ通信のボトルネックを緩和し、スムーズなデータフローが実現される。The Registerによれば、HPEは2025年後半の出荷を目指しているが、このネットワーク性能が本格的に活用されることで、高密度計算が求められる分野において強力な選択肢となり得る。
エンタープライズ市場を見据えたProLiantシリーズの多様性
HPEは、エンタープライズ市場向けにCray EXシリーズだけでなく、ProLiantサーバーシリーズの展開も行っている。このシリーズには、Nvidia H200を8台搭載可能なXD685やIntel Gaudi3アクセラレーターを8台標準装備したXD680といった多様なモデルが含まれており、特にAIワークロードや大規模データ処理を視野に入れて設計されているのが特徴である。
XD685ではHBM3eメモリを1.1TBまで搭載可能で、今後のアップグレードでBlackwell GPUにも対応し、メモリ容量を最大1.5TBまで増強することができる点も見逃せない。このように、HPEのProLiantサーバーシリーズは、NvidiaやAMDのGPUに加えIntelの最新アクセラレーターも含む柔軟な対応力を持ち、様々な企業のニーズに応える構成となっている。
公式発表によれば、HPEはProLiantシリーズの冷却にも空冷設計を維持し、iLOライトアウト管理システムを備えた高効率な運用環境を提供することで、データセンター内の導入に適した選択肢として位置づけている。