AMDは、ゲーム部門の収益減少を受け、世界の従業員数の約4%にあたる1,000人以上の人員削減を実施すると発表した。背景には、ゲーム用GPUの需要低迷と、データセンターおよびAI分野の収益拡大がある。2024年第3四半期決算でゲーム部門の収益が前年比69%減少した一方、データセンター事業は収益が前年同期の7倍を超える規模に成長している。AMDは今後、ゲーム用CPUや次世代Radeon GPUを基盤とする中で、AIおよびデータセンターの分野に資源を集中させる方針と見られている。

AMDのゲーム部門における収益減少の背景と課題

AMDのゲーム部門は、カスタムチップの需要減少に伴い厳しい局面を迎えている。同社は、PS5やXbox Series X向けに特化したカスタムチップでゲーム機市場に深く関与してきたが、これらの製品が市場に登場してから数年が経過し、収益の成長が鈍化している。特に、過去9か月でのゲーム部門の収益は前年同期比で大幅に減少し、データセンター事業の成長と対照的な状況にある。

PC市場でもAMD Radeonのシェアは伸び悩んでおり、競合するNvidia製品がゲーマーの支持を得ている現状では、AMDのGPUは注目度の面で劣勢に立たされている。こうした中で、AMDはゲーム部門の構造的な再編を迫られており、リストラが不可避の対応とされたとみられる。

同社のリサ・スーCEOは、これを次世代GPU製品への転換期と位置付け、将来的には競争力を取り戻す姿勢を示している。しかし、Nvidiaが市場シェアを拡大する中でAMDのGPUがどれだけの地位を確保できるかは、依然として不透明である。ゲーム業界における消費者ニーズの変化に柔軟に対応できるかが、AMDの将来を左右するポイントとなるだろう。

データセンターとAI分野におけるAMDの急成長と投資の意図

AMDはデータセンターとAI分野での収益成長を背景に、これらの分野への投資を強化している。2024年9月までの四半期でデータセンター収益は前年同期比で大幅に拡大し、営業利益もゲーム部門を大きく上回った。同社はリソースを「最大の成長機会」に注ぐ方針を示しており、AI技術の進展がビジネスモデルに及ぼす影響を注視している。この戦略は、NvidiaがAI市場で成功を収めたことを鑑みれば、AMDが競争優位性を確立するための必然的な選択ともいえる。

また、データセンター市場でのシェア拡大により、AMDはクラウドサービスやビッグデータ解析といった分野での存在感を高め、競合と渡り合う基盤を築きつつある。同社がAI分野で革新を追求し続ける限り、今後の事業成長が期待できる一方で、ゲーム部門とのリソース配分をいかに最適化するかが重要な課題となるだろう。AMDは高収益を生み出す分野への集中を進めつつ、各事業の収益バランスをどのように取るかが、今後の鍵を握る。

今後のAMDの展望と業界での競争力回復に向けた戦略的選択

AMDは、次世代Radeon GPUの開発に取り組むことで、PCゲーム市場での競争力を回復しようとしている。Steamの最新調査結果では、Nvidiaが上位を独占しており、AMDのRDNA 3 GPUであるRadeon RX 7900 XTXはシェアが0.01%にとどまっている。この状況を打破するためには、性能面や価格面での飛躍的な向上が必要であり、次世代製品への期待が高まっている。

一方、AMDはPS5 Pro向けの新チップも開発中とされるが、需要が従来のPS5を上回るかは未知数である。AMDがこうした取り組みを通じて競争力を取り戻すためには、製品の魅力を引き上げるだけでなく、マーケティング戦略の強化も不可欠といえるだろう。データセンターやAIに注力しつつも、ゲーム市場での影響力を維持するために、同社が革新と差別化をどこまで実現できるかが、今後のAMDの成長を左右するポイントである。

Reinforz Insight
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