ドナルド・トランプ次期大統領とその政権移行チームが、電気自動車(EV)に対する7,500ドルの税額控除廃止を計画しているとの報道を受け、テスラやリビアンなどのEVメーカーの株価が急落した。特にリビアンの株価は14%以上の大幅下落、ルーシッドも5%の値下がりを見せた。

テスラは競合に比べ税控除への依存が少ないため、影響が相対的に限定的であるとされるが、フォードやゼネラル・モーターズといった他の大手メーカーは、収益性の高いガソリン車の製造に舵を切る可能性が浮上している。税控除廃止により、米国内のEV開発計画に与える影響が注目されている。

トランプ政権の税控除廃止計画がEV業界に与える影響とは

トランプ政権が発表した7,500ドルのEV税額控除の廃止計画は、EV市場全体に広範な影響を及ぼすと見られている。テスラにとっては税控除の削減は長期的な利益減少につながる懸念があるが、同社は依存度が低いため、その影響は他のメーカーと比べて限定的である。ウェドブッシュ証券のアナリストは、テスラが長年の収益実績を持つことから、補助金がなくとも競争上の優位性を維持できるとの見方を示している。

一方、フォードやゼネラル・モーターズのような米国大手自動車メーカーにとっては、補助金廃止がEV開発の勢いをそぐ要因になる可能性がある。これまで米国政府が進めてきた税控除は、各メーカーが高コストのEV技術に投資する上で重要なインセンティブだった。しかし、このインセンティブが失われることで、EV市場の競争環境に変化が訪れる可能性がある。特にガソリン車製造の利益が高い従来の自動車メーカーは、収益性を重視しガソリン車の開発にリソースを再分配する可能性が指摘されている。

テスラとトランプ政権の意外な協調関係

テスラのCEOイーロン・マスク氏がトランプ政権の意向を支持する意向を示したことは、注目すべき動きである。ロイター通信によれば、テスラは税控除廃止に賛成の姿勢を見せており、これは市場に一種の波紋を呼んでいる。テスラは他の競合に比べて市場規模が大きく、政府補助に依存しない収益構造を築いていることがその背景にあると考えられる。この自信が、テスラの戦略的な判断を後押ししている可能性がある。

だが、マスク氏のこの動きは、他のEVメーカーにとって厳しい市場環境を招きかねない。リビアンやルーシッドのような新興企業にとって、税控除は新規投資を引き付け、コスト高を相殺する手段である。テスラが補助金廃止を支持することは、自社の競争優位を確保するための戦略とみなされる可能性がある。トランプ政権との協調は、マスク氏が自社の利益のみならず、EV市場の勢力図全体を見据えた動きであると評価される一方、他の企業には厳しい試練となるだろう。

税控除廃止が米国のEV普及政策に及ぼす影響

税額控除の廃止は、米国のEV普及政策そのものに影響を及ぼす恐れがある。これまで政府が進めてきたEV税控除は、米国国内でのEV普及を後押しし、温室効果ガス削減やエネルギー自給率向上に寄与してきた。トランプ政権の政策は、短期的な企業のコスト削減にはつながる可能性があるが、長期的なエコロジーへの影響が懸念される。

特に、これまでの税控除政策が撤廃されれば、EVのコスト競争力は低下し、市場拡大のスピードも鈍化するリスクがある。消費者にとっても、補助金削減は購入意欲の減少に直結しやすく、EV市場の成長が緩やかになる可能性がある。政府の支援が減少することで、米国は再びガソリン車中心の市場へ逆行する可能性もあるため、今後の動向が注視される。

Reinforz Insight
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