ARKインベストメント・マネジメントを率いるキャシー・ウッドは、テスラとパランティアという二大成長株の一部を売却し、ポートフォリオ戦略の見直しを進めている。テスラ株20,552株、パランティア株26,047株の売却は合計で約870万ドルに相当し、高騰する株価に対する評価見直しが背景にあると見られる。
代わりに購入されたのはアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)とアマゾン株で、それぞれ150万ドルと400万ドル相当。特にアマゾンはAI関連の投資拡大と防衛分野での契約獲得により中長期的な成長が期待されている。この資金の移動は、高金利環境下でのリスク回避と収益安定化を狙った戦略といえるだろう。
テスラ株の売却に見るキャシー・ウッドの短期的判断
キャシー・ウッド率いるアーク・インベストメント・マネジメントが、テスラ株20,552株を売却した。この動きは、テスラがカリフォルニア州でのEV補助金から外れる可能性があるとの報道を受けたものであり、株価の下落に先立つリスク回避策と見られる。700万ドル相当の売却にもかかわらず、テスラは依然として同社のポートフォリオで最大の保有割合を占めていることが注目に値する。
この売却は、キャシー・ウッドの戦略が単なる長期的視点にとどまらないことを示唆する。テスラのような破壊的イノベーションを体現する企業への投資を軸にしながらも、短期的な市場の変動や規制リスクを的確に織り込む能力は、彼女の投資哲学に柔軟性が備わっている証拠といえる。
ただし、今回の判断が高金利環境下での正解だったかどうかは、今後のテスラの株価動向次第である。市場の一部では、この動きがテスラ株の割高感を意識した売却との見方もあるが、成長ポテンシャルを過小評価するリスクも否定できない。
パランティア株の売却背景と評価の再構築
パランティア株26,047株の売却により、キャシー・ウッドは170万ドルを回収した。過去30日間で43.38%もの急騰を見せた同社株は、人工知能(AI)を駆使したデータ分析技術への注目から高い評価を受けているが、急激な価格上昇に対する懸念も浮上している。ウッドがこの株式を一部手放したのは、市場の過熱感と現実的な企業評価のギャップを見据えた結果と考えられる。
パランティアの評価は、AI技術の競争が激化する中での実用性と収益性に左右される。ARKKの売却は、短期的な利益確定の側面がある一方、パランティアが中長期的にどう成長するかを冷静に見極める必要性も示している。専門家の間では、同社の強気な評価が必ずしも継続する保証はないと指摘する声がある。これを踏まえると、ARKKの動きは、AI分野の成長を利用しつつリスク分散を図る戦略の一環と解釈できる。
AMDとアマゾンへの資金移動が示す新たな期待
キャシー・ウッドが新たに注力したAMDとアマゾンは、異なる成長軌道を持つ企業である。AMDはスマートフォン市場への進出が噂されており、既存の半導体事業に加えて新たな収益源の確保を目指している。これに対し、アマゾンはAIスタートアップへの投資拡大や防衛契約の獲得によって多角的な成長を続けている。両社とも価格収益率(P/Eレシオ)の安定性が魅力となっており、高金利環境下でもリスクを抑えた選択肢となる。
アマゾンのAI分野への注力は、同社がクラウド事業を超えた成長を目指していることを示すものだ。一方、AMDは競争が激しい半導体市場でのシェア拡大を視野に入れている。この動きは、単なる財務データではなく、企業の戦略的ビジョンを重視するキャシー・ウッドの投資哲学を色濃く反映している。これらの選択が、アーク・イノベーションETFのパフォーマンス改善にどう寄与するか、今後の動向に注目が集まる。