バンク・オブ・アメリカは、AMDの株式評価を「中立」に引き下げ、目標株価を155ドルに設定した。この背景には、AI市場におけるMarvellやBroadcomの台頭があり、NVIDIAの支配的な地位もAMDの競争環境を厳しくしている。AI GPU市場の需要が拡大する中、クラウドプロバイダーやテック企業がカスタムチップを採用し、AMDの市場シェア拡大に障壁を形成している。
また、2024年上半期におけるAMDのクライアントPC事業の売上が前年同期比40%増加したことは注目されるものの、2025年にはPC市場全体の停滞が予測され、成長の鈍化が懸念される。このような状況下で、AMDは競争優位性を維持し、AI市場とPC市場双方での成長戦略を模索する必要がある。
AMDに迫るAI市場の競争圧力とカスタムチップの脅威
AI市場において、AMDが直面する競争環境は急速に変化している。NVIDIAの圧倒的な市場支配力に加え、MarvellやBroadcomがカスタムAIチップ市場で台頭していることが大きな要因である。特にMarvellは、クラウドプロバイダーや主要テック企業との連携を強化しており、Tier 1クラスのAI顧客向けプロジェクトを推進している。
この取り組みは、データセンター市場における高い成長を支える柱となっている。Broadcomもまた、OpenAIとの協力を通じてNVIDIA依存から脱却する動きを見せており、これがAMDにとって新たな競争の火種となっている。
これに対し、AMDはAIワークロード向け製品ラインの拡充を試みているものの、MarvellやBroadcomが築く独自技術の壁を乗り越えるには、多大なリソースと戦略が求められる。一方、クラウド事業者のAIチップ自社開発の動きも顕著である。
Amazonのカスタムチップ発表やGoogleのTPUの進展は、主要企業がNVIDIA以外にも独自の選択肢を模索していることを示している。AMDがこうした競争環境で持続可能な地位を確保するには、革新的な製品の投入だけでなく、顧客との戦略的な連携が不可欠である。
クライアントPC市場の変動とAMDの収益構造の課題
AMDはクライアントPC事業で注目に値する成長を遂げた。2024年上半期の売上が前年同期比40%増加したことは、PC市場での同社の競争力を証明するものである。この成長の背景には、x86プロセッサ市場におけるIntelの弱体化がある。AMDはこれを巧みに利用し、市場シェアを拡大してきた。
しかし、BofAは2025年にPC市場全体が停滞する可能性を示唆している。特に、グローバルな需要減退とサプライチェーンの課題が、AMDのクライアントPC事業に影響を及ぼすと予測される。このような状況で、AMDは多角化された収益基盤を構築し、依存度の高いPC市場以外での成長を模索する必要がある。
さらに、BofAがAMDの株価収益率(PER)を28倍に引き下げたことは、投資家が成長の持続可能性に懸念を抱いている証拠といえる。AMDにとって、PC市場の成長を補完する新たなセグメントの開拓が急務であり、その成否が今後の評価に直結するであろう。
AIとPCの二重課題を乗り越えるためのAMDの戦略展望
AMDにとって、AI市場とPC市場で直面する課題は単独ではなく複合的に作用している。AI市場では競争環境の激化が進む一方、PC市場では需要の停滞が予測される。この二重課題を解決するためには、既存事業の強化と新規分野への進出が鍵を握る。
特に注目すべきは、AMDのビジネスモデルの柔軟性である。同社は製造をTSMCなど外部に委託し、設計に特化した体制を整えている。このアプローチにより、迅速な市場適応と新規分野への資源配分が可能である。しかし、この優位性を生かすには、AIチップ市場での競争力強化が必須であり、高性能GPUやカスタムチップのラインアップをさらに充実させる必要がある。
加えて、AMDは次世代技術の研究開発に積極投資することで、差別化を図るべきである。特にAIとPCの境界を越える新技術の開発は、両市場での競争力を同時に高める可能性を秘めている。AMDの成長の鍵は、現状の課題を克服し、未来を見据えた戦略を構築できるかどうかにかかっている。