ビジネスインテリジェンス企業マイクロストラテジーがS&P 500に組み入れられる見通しについて、ブルームバーグ上級ETFアナリストのエリック・バルチュナス氏が、複雑な障壁が依然として存在すると指摘している。同指数への参加には過去4四半期の累積利益が条件とされるが、同社は過去の収益実績が基準を満たしていない。

一方で、新会計ルールが導入されることで、保有資産の公正価値変動が利益として計上され、収益構造に有利な変化が生じる可能性がある。しかし、S&P 500の委員会による裁量的な決定が最大のハードルであり、過去には基準を満たしながらも拒否された企業の事例も存在する。

このような曖昧な選考プロセスは、同社にとってリスクでありながら、同時に市場の期待感を生む要因ともなっている。最近、マイクロストラテジーはナスダック100指数に組み入れられたが、S&P 500の扉が開くかどうかは、まだ確定的ではない。

マイクロストラテジーが直面するS&P 500の組み入れ基準の実情

S&P 500の組み入れには、過去4四半期の累積利益がプラスであることが必要条件となる。マイクロストラテジーは、この基準を満たすには至っていない。同社が直近4四半期で利益を記録したのはわずか1四半期のみであり、他の四半期では赤字を計上している。こうした背景から、指数組み入れにおける基礎的な要件をクリアするための課題は大きい。

一方で、新たに導入された会計基準が収益構造に好影響を与える可能性がある。このルールでは、同社が保有するビットコインの公正価値変動を純利益として計上できるようになる。これにより、表面上の収益が大幅に改善することが予測される。しかし、このような財務の見かけ上の変化が委員会の評価にどの程度影響するかは不透明である。ブルームバーグのエリック・バルチュナス氏は「単なる数値基準を超える要素が委員会の判断を左右する」と述べており、基準達成のみでは楽観視できない状況が続くと指摘している。

曖昧な基準と裁量の影響――過去のテスラ事例から学ぶ

S&P 500の組み入れは、形式的な基準を満たすだけでは不十分であることが、テスラの事例からも明らかである。同社は過去に4四半期連続で利益を記録したものの、2020年9月の段階では指数への追加が見送られた。当時、多くの市場参加者が組み入れを予想しており、その拒否は株価の急落を引き起こした。この出来事は、S&P 500の選考過程が基準以上に委員会の裁量に依存していることを示している。その後、テスラは同年12月に組み入れられたが、約3か月の遅延が市場の不安を招いた。

こうした前例から考えると、マイクロストラテジーも同様の不確定要素に直面する可能性がある。特に、S&P 500の選考委員会が指数の安定性や市場への影響を重視する傾向を踏まえると、ビットコイン価格に依存する財務構造を持つマイクロストラテジーは慎重に評価されるだろう。投資家にとって、この選考プロセスの不透明性は短期的なリスクであると同時に、長期的なチャンスを含む要素でもある。

ナスダック100への組み入れが示す可能性とコインベースの期待

今週初め、マイクロストラテジーはテクノロジー株が多いナスダック100指数に新たに加わった。この動きは、同社が主要なテクノロジー企業としての地位を市場で確立しつつあることを示している。ナスダック100への組み入れは、S&P 500への道を間接的に示唆する一歩であるとも考えられる。ただし、ナスダック100は時価総額や流動性を重視する基準が中心であり、S&P 500とは選考基準が異なるため、同列に比較するのは難しい。

一方、暗号資産取引所コインベースについては、ビットワイズが2024年にもS&P 500に組み入れられる可能性を指摘している。これにより、暗号資産関連企業の指数組み入れが今後のトレンドとなる可能性もある。ただし、マイクロストラテジーの場合、その事業の中心が暗号資産ではなくビジネスインテリジェンスであることが選考の際にどのように評価されるかが焦点となる。市場の関心が高まる中、こうした動向は、暗号資産業界全体の地位向上に影響を与えるとみられる。