ゼネラル・モーターズ(GM)は、2024年の西洋自動車業界が苦境に立たされる中で際立つ存在となった。年初来42%の株価上昇を達成し、フォードやトヨタをはじめとする主要競合他社を大きく上回った。その成功の背景には、EV市場での堅実な成長、積極的なコスト削減策、業績予測の上方修正がある。
一方で、2025年における利益水準は現状維持を見込む慎重な見解も示されている。GMの平均目標株価は18%上昇余地があると評価されるが、トランプ氏による貿易政策リスクなどの逆風も潜んでいる。2025年の行方は、EV事業の収益化と内燃機関ビジネスの動向にかかっていると言えよう。
GMが他社を凌駕した要因とその持続可能性

ゼネラル・モーターズ(GM)が2024年に他の自動車メーカーを大きく引き離した背景には、戦略的な成功がある。特に、同社はEV分野での拡大を図り、テスラに次ぐ米国第2位の販売シェアを確保した。これにより、フォードやトヨタが苦戦する中でも、GMは業績予測を3四半期連続で上方修正することができた。140億~150億ドルという調整後税引前利益の見込みは、同業他社に比べて明らかに優位性を示している。
さらに、GMは中国市場での戦略見直しを進めており、これにより経営リソースの再配分を可能にした。一方で、ロボタクシー事業の撤退や従業員削減といった大胆なコスト削減策は、年間10億ドルの節約効果を生んでいる。このような施策が、同社の株価が42%も上昇した理由を説明している。
ただし、この成功が持続可能か否かは今後の課題である。EV市場では競争が激化しており、中国メーカーの低価格EVが米国市場に参入するリスクがある。また、GMの内燃機関(ICE)ビジネスは成熟期を迎えており、長期的には収益源としての信頼性が低下する可能性がある。GMがこの課題をどのように克服するかは、業界全体の注目を集めるだろう。
EV市場における成長と内燃機関ビジネスの収益バランス
GMがEV市場での地位を確立した一方で、内燃機関(ICE)ビジネスの行方は慎重に見極める必要がある。S&P 500を上回る株価パフォーマンスを背景に、同社はEV分野での損失を縮小させることに成功した。しかし、ICEビジネスの利益が大幅に悪化する可能性が指摘されており、2025年の利益水準が2024年と同程度になるという見通しがそれを裏付けている。
この収益バランスの課題は、GMだけに限ったものではない。自動車メーカー全般がEV事業への移行を進める中、従来型の内燃機関車両の需要が縮小することは避けられない。だが、GMの戦略はこの変化を巧みに利用している。同社が手掛ける新型EVモデルの発売は、米国内での市場シェア拡大を目的としており、電池技術やコスト効率の向上にも力を注いでいる。
このような背景を踏まえると、GMがICEビジネスとEV事業の収益バランスをどのように保つかは、同社の将来性を評価する重要な要素である。EV市場の拡大が進む一方で、収益安定化のためには、さらなるコスト削減や新たな収益源の確保が求められる。
米国の貿易政策リスクとGMの対応策
GMの成長に影響を与える可能性があるのが、米国の貿易政策である。トランプ氏が再び政権を握る場合、カナダやメキシコからの輸入品に関税を課すリスクがあると指摘されている。この場合、GMの調達コストが増加し、利益率に悪影響を与える可能性が高い。
しかし、GMはこれまでも多くの逆風を乗り越えてきた。同社は北米市場における製造拠点の見直しを進めており、地域ごとの供給網の最適化に取り組んでいる。また、関税の影響を最小限に抑えるための戦略的な交渉力を持つと考えられている。これに加えて、同社の管理体制が今後も適切に機能すれば、短期的なリスクを回避する可能性が高い。
このような背景から、GMの成長軌道は完全にリスクフリーではないが、その対応力と市場での地位は他社よりも堅実であるといえよう。2025年に向けた市場の注目は、こうした外部要因をどれだけ制御できるかに集約されている。