AMDが次世代GPUで「RX 9000」シリーズの命名規則を採用することが明らかとなった。RDNA 4アーキテクチャを基盤とするこの新ラインナップは、従来の「RX 8000」を回避する形で設計され、小売サイトやリーク情報から複数のモデルが判明している。その中には「RX 9070 XT」および「RX 9070」が含まれ、これらはNavi 48 GPUを使用し、競合他社のGeForce RTX 4080をターゲットにしている。
さらに、ノートパソコン向けモデルやiGPU向けの「Strix Halo」シリーズも準備中で、幅広いSKU展開が計画されている。CES 2025での正式発表が期待されるこの動きは、NVIDIAの新世代製品ともタイミングを合わせており、競争が激化する兆しを見せている。
RX 9000シリーズがもたらす新たな命名規則の背景
AMDが次世代GPUで採用する「RX 9000」命名規則は、単なる数字の変更ではない。主な理由として、Strix Halo APUにおける「RX 8000」命名規則との混同を避ける意図があるとされる。Strix HaloはRDNA 3.5アーキテクチャに基づき、高性能な統合型GPU(iGPU)として設計されており、「RX 8060S」などの型番が付けられる予定である。こうした型番の重複を避けることで、製品ポートフォリオ全体の認知性を高める狙いがあると考えられる。
一方で、この命名変更は競合他社との差別化にも寄与している。NVIDIAのRTXシリーズが50番台の新製品を控えている中、「9000」という大きな数字は新時代の製品群であることを強調する効果がある。命名戦略は製品ブランドを支える重要な要素であり、AMDが顧客に与えるイメージ刷新を狙っている可能性がある。
ただし、命名規則の変更が市場でどのように受け入れられるかは未知数である。これが単なるマーケティング戦略に留まらず、実際の製品性能と結びついた形で認識されることが重要となるだろう。
RDNA 4とNavi 48の技術的進化が示す競争力
RX 9000シリーズの核となるRDNA 4アーキテクチャは、AMDの技術革新を象徴する存在である。特にNavi 48 GPUは、現行世代と比較して大幅な性能向上が見込まれ、GeForce RTX 4080との直接競合を狙った製品として位置付けられている。この技術基盤が新たな市場シェア獲得の鍵となる。
RDNA 4は消費電力の最適化やシリコン密度の向上を図り、ゲーマーやクリエイターに向けた高性能かつ効率的なGPUを提供することを目指している。また、ノートパソコン向けモデルでも「RX 9070M XT」や「RX 9070S」などがラインナップされることで、幅広いデバイスへの対応力が高まっている点も注目される。
一方で、RDNA 4の進化が競争力の維持に十分かどうかについては慎重に評価する必要がある。NVIDIAは新世代のRTX 50シリーズで「Blackwell」アーキテクチャを採用するとされており、競争は激化する一方である。AMDが技術的優位性を示し続けるためには、消費者に訴求する性能と価格のバランスを提示することが不可欠となる。
Strix Haloが示すiGPU市場の新たな潮流
Strix Haloは統合型GPU(iGPU)の未来像を示す製品群として注目されている。RDNA 3.5アーキテクチャを基盤とし、最大40コンピュートユニットを搭載したこの製品は、従来のiGPUの性能を大きく超える可能性がある。特に「RX 8060S」や「RX 8050S」といった型番で展開され、Ryzen AI Max+ Pro 395などのAPUと組み合わせて利用される予定である。
Strix Haloの強みは、単なる性能向上に留まらない点にある。AI推論や高度なグラフィック処理を可能にする設計は、デバイスの多様な用途に対応する柔軟性を持つ。これにより、モバイル端末や軽量ノートパソコン市場においても、競合他社との差別化を図る狙いがあると推測される。
ただし、この新しいiGPUが市場でどのように評価されるかは、消費者や開発者の需要次第である。AMDがこの製品群を通じて従来の「iGPU=性能不足」という固定観念を覆すことができれば、市場における重要なポジションを築く可能性がある。