バークシャー・ハサウェイが第3四半期末時点で過去最高の現金保有額3252億ドルを記録。その88%以上を米国国債に投資し、リスク回避を優先する姿勢が浮き彫りとなった。一方、アップル株を大幅に削減し、新たにウルタ・ビューティーやドミノ・ピザなど4銘柄を購入。短期的な売買が見られる一方で、ハイコやオキシデンタル・ペトロリウムなどの持ち株を増加させている。今年の売却対象にはHPやパラマウント・グローバルが含まれ、多様な投資戦略が際立つ年となった。

現金保有の戦略的意義とリスク回避の背景

バークシャー・ハサウェイが第3四半期末に記録した現金保有額3252億ドルは、その投資方針の変化を象徴するものである。このうち88%以上が米国国債に投資されており、安全資産への強いシフトが見られる。この動きは、市場の不安定さや金利上昇を背景に、企業のリスク管理意識が一層高まったことを示している。バークシャーのリスク回避的姿勢は、ウォーレン・バフェットの「現金はオプションである」という哲学に裏打ちされており、慎重な投資判断を継続していることがわかる。

しかし、これほどの現金保有が逆に機会損失を生む可能性も否定できない。インフレや金利環境が今後の投資判断にどう影響を及ぼすかは注目点であり、市場関係者は新規の大型投資や自社株買いなどの動きに期待を寄せている。バークシャーが引き続き国債を優先するか、それとも株式市場への再参入を加速させるかが鍵となろう。

アップル株削減が示す集中投資からの転換

アップル株の大幅削減は、バークシャーのポートフォリオ戦略において重要な意味を持つ。同社はアップル株を6億株以上売却し、保有価値はかつての1750億ドルから70億ドルにまで縮小した。アップルは長年、バークシャーの主力銘柄であり、今回の削減は驚きをもって受け止められている。バフェットの投資哲学に基づけば、集中投資が高リスクと判断された可能性がある。

一方で、バークシャーは依然としてアップル株を多額に保有しており、完全な撤退ではない。むしろ、多角的なポートフォリオを形成するための一環と見るべきである。アップル株の削減が他の成長株や安定株への再投資に向けられるのであれば、これが同社の投資収益にどのような影響を及ぼすのかが今後の焦点となる。集中投資から分散型投資への移行は、変化する市場環境に対応するための柔軟な戦略として評価されるべきだ。

新規投資と短期売買が示唆する柔軟性

ウルタ・ビューティーやドミノ・ピザなどの新規投資は、バークシャーのポートフォリオに新たな色を加えている。一方で、ウルタ・ビューティー株を短期間でほぼ全て売却するなど、従来の長期投資スタイルとは異なる動きも観察される。これらの短期売買は、企業価値評価や市場の変化に迅速に対応する柔軟性を示している。

また、ハイコ・コーポレーションやオキシデンタル・ペトロリウムの株式を増加させたことは、特定セクターへの強気姿勢を示唆する。特にハイコは航空関連事業で知られ、長期的な成長が期待される分野である。これにより、バークシャーが今後も積極的に新興市場や成長分野に資本を振り分ける可能性があることが明らかになった。短期売買が示す柔軟性と、成長株への積極投資のバランスは、現代のダイナミックな市場環境において一層重要な戦略となり得る。