次期トランプ政権の下で、新たな飛躍が期待されるアーチャー・アビエーション(Archer Aviation)が注目を集めている。同社は電動垂直離着陸機(eVTOL)のリーダーとして知られ、2024年には株価が82%上昇、現在11ドルという記録的な水準に達している。近年、防衛分野への進出を図るため、自律システム企業アンドゥリル(Anduril)との提携を発表。
このパートナーシップは、軍事的ステルス作戦などの新市場で競争優位を築くと見られる。加えて、トランプ政権が規制の簡略化や公共部門での新たな契約を後押しする可能性が指摘されており、同社の商業化への追い風となるかもしれない。ただし、収益化の実現には時間が必要とされ、投資家には慎重なリスク管理が求められる局面でもある。
アンドゥリルとの提携がもたらす防衛分野の新たな可能性
アーチャー・アビエーションは、電動垂直離着陸機(eVTOL)の開発を通じて防衛分野への進出を図るため、自律システム企業アンドゥリル(Anduril)との提携を発表した。アンドゥリルは先進的なドローン技術やロケットシステムで知られる企業で、創業者のパーマー・ラッキー氏は技術革新の象徴的存在である。この提携により、アーチャーのeVTOL機が持つ低騒音特性が、軍事的なステルス作戦で重要な役割を果たす可能性が浮上している。
特に、ステルス性が求められる特殊作戦や、低騒音での高精度な輸送が必要な局面で、アーチャーの機体は従来の航空機と比べて優位性を持つと考えられる。これにより、軍事用途におけるeVTOL市場は急成長の可能性を秘めている。また、ステルス作戦に関連する市場規模は次の10年間で1,000億ドルを超えると予測されており、アンドゥリルとの連携はアーチャーに新たな成長エンジンを提供するだろう。
一方で、こうした取り組みが実際の収益化につながるまでには、技術的および規制上の課題が残ると見る専門家もいる。アーチャーはまだ収益化に至っておらず、今回の提携をどのように実際の事業機会に変換するのか、その戦略が問われる段階にあるといえる。
都市部の渋滞緩和から公共部門への拡張
アーチャー・アビエーションはこれまで、都市部の混雑緩和を目指すeVTOLタクシーの提供を主要な事業戦略としてきた。同社は、UberやLyftのような従来のライドシェアサービスに代わる空中交通手段を提供し、大都市の交通渋滞を軽減することを目標としている。
しかし、最近の動きは、この枠を超えて公共部門への進出を模索する兆候を示している。同社のCEOアダム・ゴールドスタイン氏によれば、公共部門での利用例はまだ十分に認識されていないが、軍事用途や政府機関向けのサービス提供が同社にとって新たな収益源となり得るという。特に、国防分野における規制承認やインフラ整備の迅速化が実現すれば、事業の商業化が加速する可能性がある。
ただし、この転換には慎重なアプローチが求められる。公共部門での成功は、政府との関係構築や規制対応能力が重要な鍵を握る。トランプ政権下で規制の効率化が進む可能性があるものの、その具体的な影響は今後の政策展開次第である。
投資家が注目すべきアーチャーのリスクと可能性
アーチャー・アビエーションは、eVTOL市場の成長に伴い大きな潜在力を持つ企業といえる。しかし、現在の株価水準や市場環境を考慮すると、慎重な投資判断が求められる局面でもある。同社はすでに何十億ドルもの購入注文を獲得しているが、収益化にはまだ至っていない。
この背景には、技術の開発や規制の整備に時間がかかる現状がある。さらに、新政権がどの程度eVTOL市場を政策的に支援するかも不透明である。例えば、トランプ政権がアーチャーの商業化プロセスを後押しする可能性はあるものの、その優先順位が低い場合、同社が期待するほどの追い風にはならないかもしれない。
その一方で、投資家にとっての魅力も存在する。eVTOL市場そのものが成長期にあり、軍事用途や公共交通としての需要が広がれば、アーチャーはその恩恵を大いに享受する可能性が高い。したがって、リスクを許容できる余裕があり、長期的な視点を持つ投資家にとって、同社は興味深い選択肢となり得るだろう。