Appleは2024年、年初来リターン32%と堅調な成績を示したものの、主要銘柄「マグニフィセント7」の中でMicrosoftに次ぐ2番目に低いパフォーマンスにとどまった。Wedbush SecuritiesのDan Ives氏は、Appleの時価総額が5兆ドルに達する可能性を指摘し、iPhoneやMacなどのAI主導のアップグレードが鍵になると予測する。

一方、悲観的な見方も根強く、中国市場での競争激化や、Warren Buffett氏の株式売却が逆風となる。また、貿易政策の変化によるリスクも懸念材料である。Appleの成長はAI搭載デバイスの売上動向に大きく左右される見通しだ。

AI技術とアップグレードサイクルが鍵となるAppleの未来

Wedbush SecuritiesのDan Ives氏は、Appleが今後12~18ヶ月で時価総額5兆ドルを達成すると予測する。同氏の強気な見解は、AI主導のアップグレードサイクルがもたらすiPhoneやMac、iPadなどの売上増加に基づいている。AIを活用したデバイスの進化は、消費者の買い替え意欲を刺激する可能性が高い。特に、次世代iPhoneには「Apple Intelligence」と呼ばれる独自のAI技術が搭載される見込みであり、これがユーザー体験を飛躍的に向上させるとされている。

ただし、この成長には慎重な視点も必要だ。AI技術が競争優位をもたらす一方で、製品の利益率向上にどの程度寄与するかは未確定である。例えば、AI搭載製品が高価格となる場合、消費者がこれを受け入れるかどうかは市場の反応次第である。また、技術革新は競合他社にも波及するため、Appleが独占的な地位を保つ保証はない。AIを軸にしたAppleの戦略がどこまで成果を上げられるか、今後の動向に注視する必要がある。

米中貿易摩擦と中国市場での競争激化

Appleにとって中国市場の動向は無視できない要素である。Donald Trump氏が大統領に再選される可能性が取り沙汰される中、中国からの輸入品への関税再導入がAppleの供給網に与える影響は甚大である。過去、米中貿易摩擦が激化した際には、Appleの株価が大幅に下落し、時価総額で1兆ドルを失った例がある。同様のシナリオが再び起きる可能性は排除できない。

さらに、Appleは中国市場における競争の激化にも直面している。Huaweiをはじめとする中国メーカーは、価格競争力と地域ブランドの強みを武器に、シェアを拡大している。最近ではHuaweiが高級スマートフォンの価格を引き下げたことで、競争はさらに厳しさを増している。Appleがこれらの状況を克服するには、製品の付加価値を明確化し、顧客基盤を強固にする戦略が必要である。

投資家の戦略とAppleの評価を巡る議論

Appleの株価は、予想利益の約34.5倍で取引されており、過去3年間の高値に近い水準にある。この評価は、同社がソフトウェアとサービス分野での収益を拡大した結果とも言える。しかし、投資家の間では慎重な姿勢も見られる。Berkshire Hathawayの会長Warren Buffett氏によるApple株の売却が市場に与える影響は否定できない。同氏の行動は、Appleへの信頼低下を象徴しているとも解釈される。

一方で、Appleの成長可能性を支持する声も少なくない。特にAI技術の普及が進む中、Appleがこの分野でリードを保つ限り、株価の上昇余地は残されている。とはいえ、投資判断には冷静な分析が必要であり、現在の高いバリュエーションが将来的な利益成長に見合うかどうかは今後の市場環境次第である。

Reinforz Insight
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