ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは、2024年における市場環境の高水準を背景に、1,330億ドル相当の株式を売却した。しかし、バフェットはコカ・コーラとアメリカン・エキスプレスという二つの重要な銘柄を売却せず、長期的な価値への確信を示している。

コカ・コーラはその強力なブランド力と安定した配当収入で、アメリカン・エキスプレスは競争優位性を活かした収益成長でそれぞれ存在感を放っている。両社の成長戦略と市場におけるポジションは、バフェットの保有姿勢を支える鍵となっている。

バークシャー・ハサウェイの売却戦略が示す市場の「歴史的高水準」

ウォーレン・バフェットが2024年に行った1,330億ドル相当の株式売却は、市場環境の「収益30倍」という高水準を意識したものと見られる。この倍率は、歴史的にも高い評価を受けた株式市場の状況を示している。バフェットはこれに対応し、主要な株式資産を現金化する戦略を選んだ。この動きは、単なる利益確定ではなく、将来的な市場調整に備えるリスク管理の一環と解釈できる。

売却の主な対象には、バークシャー・ハサウェイの主要銘柄であるアップルやバンク・オブ・アメリカが含まれており、特に後者の持分を約4分の1削減したことが注目される。これらの売却は、短期的なポートフォリオの再編を超え、市場全体の過熱感を見極めた慎重な判断と考えられる。ただし、この判断が未来の市場動向に完全に適応するかは未知数である。

一方で、売却を行った一方で特定の銘柄を保持する選択肢は、バフェットの長期的な投資哲学と一致している。S&P 500の収益倍率に対する警戒が強まる中、現金保有の増加は、将来的な大規模な投資機会を狙う布石である可能性が高い。

コカ・コーラの配当収益が支えるバフェットの長期戦略

コカ・コーラはバークシャー・ハサウェイのポートフォリオにおいて長期的な安定収益源である。同社の株式は、1988年の初期投資以来、一度も売却されておらず、30年以上の期間で累積的な配当と株式分割による利益を生み続けている。2024年第3四半期時点でバークシャーは4億株を保有し、年間7億7,600万ドルの配当収入を得ている。

現在のコカ・コーラは、当初の投資時点ほどの高成長企業ではないものの、強固なブランド力と国際的な市場シェアを持続的に拡大している点が特筆される。特に収益成長率が業界平均を上回る見通しは、堅実な経営戦略の賜物である。同時に、配当利回りが3.14%と高水準にあることは、他のリスク資産が不安定な時期における貴重な収益基盤となる。

独自の考えとして、コカ・コーラのような銘柄は、景気後退期においても一定の安定を維持する可能性が高い。ただし、収益がS&P 500をアウトパフォームするかは保証されておらず、投資家にとっては配当収入を主な目的とする選択肢となる。

アメリカン・エキスプレスが示す競争優位性と収益成長

アメリカン・エキスプレスは、クレジットカード業界で確固たる地位を築いており、バークシャー・ハサウェイの保有株の中でも長期的な収益成長の柱である。同社の収益は、1964年の1,250万ドルから2024年には99億ドルにまで拡大しており、この間の成長率は同業他社を凌駕している。

2024年第3四半期には、カード会費収入が前年同期比で18%増加し、22億ドルに達した。これらの収益は、既存顧客の維持と新規顧客獲得のためのマーケティング活動に再投資されている。また、アメリカン・エキスプレスの顧客は他ブランドと比較して平均支出額が高く、この点が同社の利益率向上に寄与している。

独自の視点から見れば、アメリカン・エキスプレスは短期的な景気変動に影響を受ける可能性があるが、長期的にはブランド力と収益モデルの優位性を背景に持続的な価値を提供する企業である。バフェットがこの銘柄を保持し続けることは、長期的なリターンを重視する投資哲学と一致している。