公益株は安定性の象徴として長らく重視されてきたが、近年はAIデータセンター需要を支える新たな成長分野として注目されている。米国各地で建設が進むAIデータセンターに電力を供給する企業が、投資家の関心を集めている状況だ。
その中でも、PPLコーポレーションとエンターギー・コーポレーションはアナリストから「2025年の注目公益株」として高く評価されている。これらの企業は、地域ごとの規制事業や電力供給能力を武器に、新たな利益の可能性を切り拓こうとしている。
AIデータセンターの需要がもたらす公益業界の新潮流
AI技術の発展がもたらす影響は幅広いが、その中でも大規模なデータセンター建設ラッシュが、公益業界に新たな商機を提供している。これらのデータセンターは莫大な電力を必要とし、米国全土で電力需要が急増している。PPLコーポレーションがケンタッキー州での発電能力を強化しているのも、こうした背景がある。ジェフリーズは、AIの成長が同社の業績に好影響を与えると指摘し、競争優位を強調している。
さらに、エンターギー・コーポレーションは、テキサス州やルイジアナ州での事業基盤を活用し、AIデータセンターの電力供給を拡大しつつある。この流れは、公益株の従来の安定収益モデルから、より成長志向のモデルへの転換を示している。AIを支える基盤としての役割を果たす公益企業が今後も増加する可能性が高いと考えられる。
規制緩和と電力網強化がもたらす市場競争の変化
PPLやエンターギーが特に注目される理由の一つとして、各州の規制緩和による事業環境の変化が挙げられる。ペンシルベニア州では、電力送配網の効率化を目的とした政策が推進されており、これがPPLの競争力強化につながっている。ロードアイランド州では、再生可能エネルギーの導入が進む一方で、PPLは既存インフラの改良を加速させる計画を発表した。
エンターギーにおいても、テキサス州での電力網強化が重要な課題となっている。同社は近年、老朽化した設備の更新や新たな送電ラインの建設を進めており、これが将来的な収益向上につながる可能性を秘めている。これらの動きは、公益企業間の競争を一層激化させる要因となるだろう。
AI関連需要の持続可能性と投資家の視点
AI需要が今後も持続するかは議論の余地があるが、現時点ではPPLやエンターギーのような公益企業にとって、大きな追い風となっていることは明らかである。JPMorganやモルガン・スタンレーが両社を「オーバーウェイト」と評価している点もその証左である。これらの企業は、配当成長率を6~8%と予測しており、安定したキャッシュフローが見込まれている。
ただし、AIブームが一時的なものに終わるリスクも考慮する必要がある。これらの公益企業がどこまで持続可能な成長戦略を構築できるかが、投資家の判断材料となるであろう。今後は規制や市場動向に応じた柔軟な対応が求められる局面が増えると考えられる。