AMDは、CES 2025で発表したRyzen AI Max+ 395 APUにより、AIプロセッサーの新時代を切り開いた。Nvidia RTX 4090、Apple M4 Pro、Intel Ultra 9 288Vといった主要競合をAI処理速度やレンダリング性能で凌駕し、特にLM StudioでのAIトークン処理では2.2倍の速度を達成した。
16コアのZen 5 CPUとRDNA 3.5統合グラフィックス、さらにXDNA 2 NPUを組み合わせた革新的なアーキテクチャにより、70B LLMの動作を可能とし、Copilot PC+の要件を満たす。加えて、最大96GBの統合メモリ割り当てと256GB/sのメモリ帯域幅を備え、AIタスクでの圧倒的なパフォーマンスを発揮している。
AI PC市場における「Halo」クラスとして位置づけられたRyzen AI Max+は、AMDが提唱する次世代コンピューティングの象徴であり、業界における競争をさらに加速させる存在となるだろう。
Ryzen AI Max+の革新を支える統合メモリアーキテクチャの特長
AMDのRyzen AI Max+は、従来のアーキテクチャの限界を打ち破る「Unified Coherent Memory Architecture」を採用している。この新しいメモリインターフェイスは、CPU、GPU、NPU間で一貫したメモリ共有を可能にし、最大96GBのメモリを統合グラフィックスに割り当てることで、最大256GB/sのメモリ帯域幅を実現している。
この設計により、AIタスクや高度なグラフィックス処理におけるパフォーマンスを飛躍的に向上させた。特に注目すべきは、これがAIプロセッサーの設計における根本的な変化をもたらしている点である。従来のプロセッサーでは、CPUやGPUが個別にメモリを扱い、データの転送に時間がかかることが多かった。
一方で、Ryzen AI Max+では、メモリ帯域幅の効率的な活用により、AIモデルのトレーニングや推論が滑らかに行える。これにより、特にLM StudioなどでのAI処理で他社製品を上回る性能を発揮している。AMDがこの革新を実現した背景には、AIとコンピューティングの融合という業界の新たな潮流がある。
メモリ共有の効率化により、今後のAIアプリケーションの可能性が広がると期待されており、他のプロセッサーメーカーにもこのアプローチが影響を与えることは間違いない。
主要競合製品に対する性能優位性とその意義
AMDの公式発表によれば、Ryzen AI Max+ 395は、Nvidia RTX 4090やApple M4 Pro、Intel Ultra 9といった主要競合製品をさまざまなタスクで凌駕している。特に、Nvidia RTX 4090に対してはAIトークン処理速度で2.2倍、Intel Ultra 9 288Vにはレンダリングで平均2.6倍、Apple M4 ProにはBlenderやV-Rayなどのレンダリング作業で圧倒的な性能を示している。
これらのデータは、AMDの製品設計がAI特化型プロセッサーとしていかに進化しているかを物語るものである。こうした性能差は、単なるハードウェアスペックの勝敗にとどまらない。AIプロセッサー市場では、パフォーマンスだけでなく、効率性や柔軟性も重要視される。
Ryzen AI Max+は、強力な性能を提供するだけでなく、最大70B LLMに対応することで、次世代のAIアプリケーションに向けた広範な互換性を実現している。この結果、AMDはAIコンピューティングの「Halo」セグメントでの地位を確立しつつある。
Neowinが報じたように、Ryzen AI Max+の登場はAIプロセッサー市場全体の競争をさらに激化させ、今後の技術革新に新たな基準を設定する可能性を秘めている。
Ryzen AI 7とAI 5が示す主流市場へのアプローチ
Ryzen AI Max+のようなハイエンドモデルが注目を集める一方で、AMDは主流市場向けのAIプロセッサーにも力を入れている。その代表例が、Ryzen AI 7(PRO)350とRyzen AI 5(PRO)340である。これらのプロセッサーは、手頃な価格と高い性能を兼ね備え、Intel Core UltraやQualcomm Snapdragonといった競合製品に対し優位性を示している。
特に、Ryzen AI 7 350はSnapdragon X Plus X1P-42-100に比べて最大49%、Intel Core Ultra 7 258Vに比べて最大78%高速とされており、デスクトップ用途だけでなくモバイルデバイスにも適している。この性能差は、AMDがAI技術の普及を推進するために、ハードウェアの進化とコスト効率を両立させた結果といえる。
AMDの中級モデル戦略は、AIプロセッサーの恩恵を幅広いユーザー層に届けることを目的としている。AI技術が日常生活や業務の効率化に及ぼす影響が大きい中で、Ryzen AI 7とAI 5の導入は、AIコンピューティングが主流市場に浸透するきっかけとなるだろう。