EMJキャピタル創業者兼CEOのエリック・ジャクソン氏がCNBC討論で、2025年のトップ選択肢として量子コンピュータ関連株を挙げた。
米国大統領選後に中国がRSA暗号を破る量子計算技術を発表し、さらにGoogleが12月に公表したWillowチップが数年以内の実用化を示唆したことも相まって、RigettiやIonQ、D-Wave Quantumなどの株価が急騰した。
ジャクソン氏は市場評価額が550万ドルのBTQ Technologies(OTC: BTQQF)にも投資しており、これらへの出資をベンチャーキャピタル的戦略とみなし、Nvidiaのような既存企業への潜在的脅威を強調している。
量子コンピューティングの核心技術と既存GPUの行方
量子コンピューティングの登場が従来のGPU中心の演算手法を塗り替えつつある背景には、演算速度の飛躍的な向上だけでなく、量子ゲートや量子ビットの特性を活用する独特のアルゴリズム設計が大きく寄与している。特に複雑な並列演算を一度に処理する仕組みが、汎用GPUでは到達し得ない高速計算を実現する基盤といわれる。また、その超並列性は新薬開発や暗号解析に応用可能であり、既存の半導体設計を超える可能性が示唆されている。
IonQやRigettiをはじめとする上場企業の事例は、従来のスーパーコンピュータでは実現が困難なタスクに量子アルゴリズムを活用し、早期実証を目指している点に注目が集まる。WallStreetPitの寄稿者であるエリック・ジャクソン氏が指摘するように、こうした企業群は依然として株価評価が低く、市場規模拡大が期待されるとの見解もある。一方、NvidiaのGPUアーキテクチャはAIや高性能演算を支えており、その地位が短期的に崩れると断定はできない。
量子コンピューティングが既存のGPU市場に影響を及ぼすかは、実際に大規模運用が可能となるか否かにかかっていると考える。事実として量産化の壁や高い研究開発コストが存在する一方、スパコンレベルの応用範囲を一気に広げ得る点が真の革新要素になるのではないかと見る。そのために必要なインフラ構築と技術的成熟が、さらなる資金流入を促す可能性は否定できない。
量子時代のセキュリティ再考と投資戦略
量子コンピュータの台頭はRSAやSHA-256といった従来の暗号化方式に深刻な脆弱性をもたらす可能性があるとみられており、金融機関や政府機関の防御策に影響を及ぼすことが懸念される。事実として、中国が発表した量子計算能力がRSA暗号を破ると報じられたことをきっかけに量子関連セキュリティへの注目が高まり、従来の鍵交換方式の見直しが急務となっている。
こうした脅威を踏まえ、BTQ Technologies(OTC: BTQQF)のように量子耐性のセキュリティを模索する企業への投資が増え始めているのは興味深い動向である。市場評価額が550万ドル程度という小型株ながら、量子暗号化技術やポスト量子暗号の普及に向けた取り組みに期待が寄せられているという意見がある。一部アナリストは、これらの銘柄をベンチャーキャピタル的な視点で捉えている。
一方で量子アルゴリズムが暗号解読の新たな手段になり得る点は、暗号資産やオンライン決済システムの安全性に直結するため、各国政府も規制枠組みを再定義する動きを見せる可能性があるといえよう。量子耐性を備えた暗号プロトコルの標準化は避けられず、新興企業と既存セキュリティベンダーとの協力関係が進む可能性を示唆しているといえる。その際、法整備や国際的な協調をどこまで実現できるかが、量子株をめぐる将来の鍵になるだろう。