近年の米国株式市場は人工知能への期待や金利引き下げを背景に急上昇し、S&P 500指数は過去数年で大幅なリターンを記録した。しかし、バリュー投資の巨匠ウォーレン・バフェットはこの市場の高値に警鐘を鳴らしている。2024年初めから9か月間で、彼が率いるバークシャー・ハサウェイは保有株式の総価値を23%減少させ、現金と短期国債の保有額を96%も増加させた。
市場全体の評価額を示す「バフェット指数」はGDPの205%以上に達しており、バフェット氏が指摘する危険水準を超えている。この動きは、市場が再び弱気相場に向かう可能性を示唆している。バフェット氏は過去にも経済的逆風を乗り越えてきた実績があり、次の市場調整を見据えた戦略を練る姿勢を崩していない。
市場の高評価とバフェット氏の警戒感
米国株式市場の主要指数は、過去数年間でAI技術への期待感や金利引き下げを追い風に大幅に上昇した。しかし、その裏ではウォーレン・バフェット氏が慎重な姿勢を示していることに注目すべきである。S&P 500指数は過去の収益の24.7倍という歴史的な高評価で取引されており、これが一部の投資家に市場の過熱感を抱かせている。
バフェット氏が売却した株式には、アップルやスノーフレークなどの銘柄が含まれる。これによりバークシャー・ハサウェイの保有株式の総価値は2717億ドルにまで減少した。特にアップル株については6億500万株以上を売却し、投資比率を大幅に引き下げた。この動きは、バフェット氏が現行の市場評価額に懐疑的であることを示していると言える。
一方で、バフェット氏の市場評価基準として知られる「バフェット指数」が、GDP比205%を超える水準に達している。The Motley Foolによれば、同指数は過去の市場崩壊の前兆と一致する水準にある。このデータをもとに、多くの投資家が警戒感を強めている。市場の過熱がいつ調整を迎えるかは不明だが、事実として評価額の水準は慎重な判断を要する状況にある。
次の弱気相場を見据えたバークシャーの現金戦略
バフェット氏は市場の高値局面において現金を積み増す戦略を採っている。バークシャー・ハサウェイの現金および短期国債の保有額は9か月間で96%増加し、現在は3203億ドルに達している。これは過去の経済危機時と同様、次の弱気相場での積極的な投資機会を狙った動きであると考えられる。
こうした現金重視の姿勢は、バフェット氏が「恐怖の時に貪欲であれ」という投資哲学に基づいている。市場が低迷した際には、割安な価格で優良株を買い込む準備を整えることが同氏の成功を支えてきた。この戦略は、過去におけるリーマン・ショック後の復興期にも高い成果を上げている。
一方で、バフェット氏は新たな投資先を完全に排除しているわけではない。2024年には、保険大手Chubb Limitedやドミノ・ピザなどに新規投資を行った。このような動きは、バフェット氏が市場全体に対して慎重でありながら、特定の分野には依然として成長の可能性を見出していることを示している。
個人投資家への示唆と今後のリスク管理
個人投資家がバフェット氏の動向を読み解く際には、その規模や投資方針の違いを考慮する必要がある。同氏は1兆ドル規模のバークシャー・ハサウェイを運営しており、個人の資産運用とは根本的に異なる戦略を採用している。現金の積極的な活用や一部銘柄の大規模な売却は、個人投資家がそのまま模倣すべきものではない。
しかし、バフェット指数や市場評価額の水準を一つの警告と捉えることは重要である。特にS&P 500指数の過去収益倍率が歴史的に高い水準にある現在、投資家は過去のデータだけに依存せず、市場全体のリスクと機会を慎重に評価すべきだろう。
The Motley Foolによれば、市場は高値圏にありながら、必ずしも一様に割高というわけではない。個々の株式が適正な価値を持つかどうかを見極める力が、将来のリターンを左右する。この点で、バフェット氏の姿勢は個人投資家にとっても有益な示唆を与えている。市場が調整を迎える可能性を視野に入れ、長期的な視点でポートフォリオを構築する姿勢が求められる。