2024年、S&P 500指数は20%以上の上昇を見せ、AI関連株を中心にテクノロジーセクターが市場を牽引した。しかし、すべての銘柄がこの流れに乗れたわけではない。Walgreens Boots Alliance、Moderna、Intel、Celaneseの4銘柄は、それぞれ業界特有の逆風や経営課題に直面し、株価が大幅に下落した。

これらの銘柄の低迷は、FRBの利下げや大統領選の影響を受けた楽観的な市場の裏で、個別企業が抱える問題の深刻さを浮き彫りにしている。投資家は市場全体の上昇に惑わされることなく、個別銘柄のリスクを冷静に評価する重要性を再認識すべきである。

Walgreensの戦略失敗と収益低迷の背景

Walgreens Boots Allianceは、統合ヘルスケアや薬局ビジネスで世界的リーダーの地位を築いているが、2024年の業績は大きな低迷を見せた。その主な要因の一つが、村山診療所(VillageMD)の買収である。この買収は地域医療の拡充と収益性向上を目的としていたが、期待されたシナジー効果が発揮されなかった。さらに、薬局業界における償還圧力が収益を圧迫し、競争激化への対応も遅れたことで、経営の柔軟性が欠如したと専門家は指摘する。

Walgreensは、過去最高の売上を記録した一方で、コスト管理や事業再編の失敗が投資家からの信頼を失わせた。この状況から、業界全体の成長性だけでなく、企業自身の戦略の正確性とスピードが問われることが浮き彫りとなる。今後はコスト削減とキャッシュフロー改善に注力する意向を示しているが、これが実際に業績回復につながるかは依然として不透明である。

テクノロジーの波に飲まれたModernaの苦境

Modernaは、新型コロナウイルスワクチンによって一時的に市場の注目を集めたが、2024年には株価が大幅に下落した。その理由は、ワクチン需要の減少と競争の激化である。特に、新規感染症対策としての製品開発が進む中で、Modernaの製品ポートフォリオが他社と比べて限定的であることが弱点となった。

また、mRNA技術の可能性は評価されているものの、短期的には利益を生み出す新製品の開発が急務であるといえる。同社の株価下落は、単なる業績悪化ではなく、技術革新と収益モデルの変革が求められる現状を反映している。Modernaの今後の成長には、医薬品開発のスピードアップと市場ニーズの的確な把握が重要とされる。

Intelの競争力低下と半導体業界の変動

半導体業界の巨人であるIntelは、2024年に58%の株価下落を記録した。その要因は、競争激化によるシェアの縮小と経営方針の混乱にある。AMDや台湾積体電路製造(TSMC)といった競合他社が技術革新を加速させる中、Intelは製品開発の遅れや戦略転換の遅滞が顕著だった。

さらに、業界全体がサプライチェーンの混乱や需要変動に直面する中、Intelの強みである自社製造モデルが柔軟性を欠いた結果、市場の変化への対応が遅れたとの指摘もある。現在、CEOのパット・ゲルシンガー氏は次世代チップ開発と効率化を推進しているが、競争力を取り戻すにはさらなる構造改革が必要であろう。