ウォール街で注目を集めるキャシー・ウッドが、Advanced Micro Devices(AMD)の株式を約994万ドル購入した。この大胆な投資は、AI市場におけるAMDの潜在力を評価したものと考えられる。AIプロセッサー市場ではNvidiaとの競争が激化しているが、AMDはデータセンター事業の成長とMi300 GPUの拡販により、2024年の収益が50億ドルを超える見通しである。

AMDの最新業績は、第3四半期の売上高が前年比18%増の68億ドル、データセンター部門の売上が35億ドルを突破するなど好調だ。ウォール街ではAMDの売上が2027年までに倍増し、株価が現在の2倍以上に成長する可能性も指摘されている。ウッドの逆張り戦略がこの投資にどのような成果をもたらすかが注目される。

キャシー・ウッドの投資戦略とAMD選定の背景

キャシー・ウッドは、破壊的技術への投資で知られるARK Investの創設者であり、リスクを厭わない大胆な投資スタイルでウォール街を牽引してきた。彼女が今回選定したAdvanced Micro Devices(AMD)は、半導体業界でのAI関連技術の競争が激化する中、戦略的なポジションを確保している。

特に、AIや機械学習におけるデータ処理を加速するMi300シリーズGPUは、Nvidiaに対抗する切り札として注目される。AMDのCFOであるジャン・ホー氏も最近のBarclays Tech Conferenceで、Mi300 GPUが2024年に50億ドル超の収益を生むと予測し、AI分野での成長に自信を見せた。

さらに、AMDはデータセンター部門での市場シェアを着実に拡大しており、EPYCプロセッサーはMicrosoftやMetaといった大手企業から高い評価を受けている。これらの企業との関係強化が、ウッドの投資判断を後押しした可能性がある。ただし、Nvidiaが依然として圧倒的なリーダーシップを握る中、AMDが競争で優位に立つには、技術革新だけでなく供給能力の強化が鍵となるだろう。

AI需要拡大を支える半導体業界の構図

AI需要の急拡大により、半導体業界は新たな成長期を迎えている。AMDはRyzenやRadeonといった一般消費者向け製品だけでなく、EPYCやMi300などエンタープライズ向け製品に注力し、この波に乗ろうとしている。特にデータセンター分野では、AIモデルのトレーニングや推論に必要な高性能プロセッサーの需要が急増している。Nvidiaの優位性が際立つ一方で、AMDは競争力を強化するために新製品の開発を加速させている。

また、AI関連プロセッサー市場における競争は、単なる技術力の差にとどまらず、供給チェーンの管理やコスト効率にも大きく依存する。AMDは現在のところ、Nvidiaに比べて価格面で優位性を持つが、この優位性を維持するためには、さらなる製造効率の改善が求められるだろう。こうした背景から、AMDが今後のAI市場でどのような立ち位置を確立するかが、業界全体の構図に影響を与えると考えられる。

AMDの成長予測とリスク要因

ウォール街のアナリストは、AMDが今後数年間で大幅な成長を遂げると予測している。例えば、売上高は2027年までに460億ドルに達し、調整後利益も1株当たり8.88ドルまで増加すると見込まれる。さらに、フリーキャッシュフローは97億5000万ドルに達する可能性があり、株価が現在の2倍以上に成長するシナリオも浮上している。一方で、こうした予測は楽観的な前提に基づいており、市場の競争激化やマクロ経済の影響といったリスクも無視できない。

特に、AI需要の変動や競合他社による技術革新がAMDの成長シナリオに影響を与える可能性がある。さらに、米中貿易摩擦など地政学的なリスクも、同社のサプライチェーンや収益に影響を及ぼすだろう。したがって、AMDの成長を期待する投資家は、これらのリスク要因を慎重に見極める必要がある。