サムスンは、2025年1月に開催されたCESにて「The Frame Pro」を発表した。本モデルは、インテリアに溶け込むデザインを維持しつつ、画質と機能性を飛躍的に向上させた点が特徴である。新たに採用されたNeo QLEDディスプレイは、Mini LED技術による明暗の繊細な表現を実現し、アート表示と映画視聴の双方で鮮明さと深みを提供する。

また、リフレッシュレートを144Hzに向上させることでゲーム体験も強化。さらに、ワイヤレスOne Connect Boxを導入し、設置の自由度を高めた点も注目されている。これらの改良により、The Frame Proは単なる装飾的なテレビから脱却し、幅広い用途に対応する製品へと進化を遂げた。

競合するLGの技術と対抗しつつ、家庭のエンターテインメント市場での地位を確固たるものにするかが今後の焦点となる。

Neo QLEDディスプレイが切り拓く新たな可能性

The Frame Proに搭載されたNeo QLEDディスプレイは、サムスンの最先端技術であるMini LEDを採用し、アート作品と映像コンテンツの両立を目指す新たな試みである。この技術は、QN900シリーズなどの高級ラインに用いられているが、The Frame Proでは画面全体ではなく下部に配置される独自のアプローチを採用している。

これにより、より深い黒や明るさの向上を実現し、アート作品の質感や筆致まで鮮明に再現することが可能となった。この技術的進化がアート表示の領域を超え、映画やゲームにどのような影響を及ぼすかは今後の課題といえる。

デモでは主にアート表示が強調されていたが、エンターテインメントの多様なニーズに対応する性能を示せば、家庭用テレビ市場においてさらなる競争力を持つだろう。技術の進化が市場全体に与える影響を注視すべきである。

ワイヤレスOne Connect Boxが生む設置自由度の革新

従来のOne Connect Boxは設置スペースやケーブル接続の制約が課題とされてきたが、新型のワイヤレスOne Connect Boxにより、The Frame Proはインテリア性と実用性を両立する製品へと進化した。この新型BoxはWi-Fi 7に対応し、最大10メートルの距離でも安定したデータ転送を実現する。

設置場所を柔軟に選べる利点は、リビングだけでなくオフィスや商業空間にも適しており、利用シーンを広げる可能性を秘めている。一方で、ワイヤレス化に伴う遅延や干渉の懸念については現段階では詳細が明らかにされていない。

しかし、LGの類似技術と比較してコンパクトな設計や利便性の高さが評価されれば、競争力を強化する要素となるだろう。この進化は、単なるテレビ設置の自由度を超え、生活空間の設計そのものに影響を与える可能性を示している。

高価格戦略がもたらすブランド価値の再定義

The Frame Proは、既存のThe Frameシリーズに比べて価格が上昇することが予測されるが、これがブランド戦略に与える影響は注目に値する。現行モデルの32インチが600ドルからである一方、Neo QLEDパネルや新型ワイヤレスBoxの搭載により、プレミアム層を狙った価格設定となる可能性が高い。

この動きは、単なるテレビとしての販売から高級家具やアートデバイスとしての位置付けを強化する狙いがあると考えられる。価格上昇が消費者にどのように受け入れられるかは、競合製品との差別化が鍵となる。サムスンは、2025年のCESでの発表を通じて製品の価値を訴求しているが、価格競争に巻き込まれるリスクも否定できない。

ブランドのプレミアムイメージを維持しつつ、新たな市場を開拓する戦略が問われる局面である。