2024年、S&P500指数の上昇を主導した「Magnificent 7」と称される巨大テック株に変化の兆しが見える中、投資戦略の再考が求められている。特に、メルク(MRK)をはじめとする製薬大手が提供する堅実な配当と割安なバリュエーションが注目を集める要因となっている。
メルクの予想PERは12.89倍とセクター平均を大きく下回り、2025年1月時点での株価上昇余地は約30%とアナリストは見ている。さらに同社は、がん治療薬Keytrudaの売上成長やRSウイルス抗体のFDA承認を含むイノベーションで成長戦略を強化している。テック株の過熱感が懸念される中、安定した収益基盤を持つ製薬株が次なる投資先として注目されている。
製薬株の割安感と堅実な収益基盤が注目を集める背景
2024年、株式市場では「Magnificent 7」と呼ばれる巨大テック企業が圧倒的な存在感を示したが、その高いバリュエーションは一部の投資家に懸念を抱かせている。こうした中、製薬株は新たな投資先として脚光を浴びている。特にメルク(MRK)は、予想PERが12.89倍とセクター平均の20.36倍を大きく下回り、割安と評価されている。さらに、予想配当利回り3.24%や14年連続での配当増加といった実績がその信頼性を支えている。
製薬企業が市場で再評価されている理由は、安定した収益基盤にある。メルクは2024年第3四半期に167億ドルの収益を上げ、主力製品であるがん治療薬Keytrudaの売上は17%増加した。このような着実な成長に加え、同社の配当性向31.67%という数字は健全な経営基盤を示している。専門家は、これが投資家にとって魅力的な選択肢であると指摘している。
市場全体のリスクを分散するためには、収益の安定性を重視することが重要である。テック株は魅力的な成長を遂げてきたが、バリュエーションの高騰が調整局面を引き起こす可能性がある。こうしたリスクを考慮すると、配当を提供しつつ割安な評価を受ける製薬株は長期的なポートフォリオにおいて重要な役割を果たすといえよう。
イノベーションと買収戦略が示す成長の可能性
メルクをはじめとする製薬大手が注目されるもう一つの理由は、イノベーションと積極的な買収戦略にある。最近、メルクは乳児用RSウイルス抗体Clesrovimab(MK-1654)のFDA承認を取得した。この新製品は2025年6月までに市場投入が予定されており、同社のパイプラインに新たな成長の可能性をもたらすと期待されている。
また、メルクはLaNova Medicinesとのライセンス契約を締結し、最大27億ドルのマイルストーン支払いを見込んでいる。この契約は同社の研究開発力と外部リソースの活用を組み合わせた戦略の一環であり、競争の激しい製薬業界での地位を強化している。同様に、他の製薬大手も特許失効リスクへの対応として買収やパートナーシップを進めており、これが業界全体の成長を下支えしている。
独自の考えとして、これらの取り組みは企業の競争力を高めるだけでなく、市場の変動に対する耐性を強化する要素ともいえる。特に、テック株の高成長が鈍化する中、製薬株のこうした安定した成長戦略は投資家の信頼を得る重要な要素となるであろう。
配当重視の投資戦略が求められる時代
近年、株式市場における配当株の重要性が再認識されている。S&P Dow Jones Indicesのハワード・シルバーブラット氏は、「Magnificent 7」が市場全体の上昇を牽引したと述べたが、その影響力に陰りが見え始めている。こうした状況を受け、アナリストは配当重視の投資戦略を推奨している。特にメルク、ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMY)、アッヴィ(ABBV)のような製薬大手は、高い配当利回りと安定した収益性から有望な選択肢として挙げられている。
配当株は単に現金を受け取る手段にとどまらず、株価下落時のリスクヘッジにも寄与する。特に、長期的な資産運用を考える場合、配当再投資による複利効果が重要な役割を果たす。この観点から、成長期待が過剰に織り込まれたテック株と比べ、適正なバリュエーションで取引される製薬株は安定的なリターンを狙う投資家に適している。
一方で、配当株にもリスクは存在する。製薬業界は特許切れや規制強化などの課題を抱えており、これらが株価に影響を及ぼす可能性がある。しかしながら、これらのリスクを上回る魅力として、持続的な収益基盤と成長戦略を評価する投資家は少なくない。これからの市場では、配当を重視したバランスの取れたポートフォリオ構築が一層求められるであろう。