ドナルド・トランプ氏が新たに掲げる高関税政策が、AI市場を牽引するAppleとNvidiaに試練を突きつける。Appleは製品の多くを中国に依存しており、iPhone価格の上昇や収益構造への悪影響が懸念される。一方、Nvidiaは台湾を拠点とする製造業への関税影響を回避する術を模索しているが、製造コストや技術性能に課題が残る。

どちらの企業も市場の動向を大きく左右する要素を抱えつつ、次なる一手が問われる状況だ。Nvidiaの高い粗利益率と技術力が有利とする見方が強いが、Appleの影響力を無視することはできない。

トランプ関税の圧力がAppleの収益基盤に及ぼす影響

Appleは、iPhoneやAirPodsをはじめとする主力製品の製造と販売において、中国市場に大きく依存している。中国は同社にとって第三位の市場であり、売上の約5分の1を占める重要な存在である。しかし、トランプ政権が導入を予定している最大60%の関税が課されれば、中国から輸入される製品の価格が急上昇し、需要の低下につながる可能性がある。

たとえば、iPhoneの価格が約240ドル引き上げられる可能性が指摘されている。Jefferiesのアナリスト、エジソン・リー氏は、Appleの高い粗利益率が3%から6.7%低下するリスクを強調している。この動きは、特に新興市場において顕著な打撃をもたらす可能性がある。

同時に、地元生産品への需要が高まる中、Appleの競争力が問われる場面が増えるだろう。一方、Wedbushのアナリスト、ダン・アイブス氏は、関税免除の可能性を指摘し、影響を軽微と見る楽観的な見解を示している。

これらの状況を踏まえると、Appleが関税免除を確保できるかどうかが今後の鍵となる。ただし、同社が製品の製造拠点を中国以外に移すことを本格化すれば、新たなサプライチェーン構築には相応のコストと時間が必要となるだろう。この動きは短期的な痛みを伴うものの、中長期的には依存リスクの分散という恩恵をもたらす可能性もある。

Nvidiaの地政学的リスクとその対応力

NvidiaはAIチップの設計で世界的に知られる存在であり、その製造を担うのは台湾の台湾セミコンダクター社である。この関係は同社の技術競争力を支えているが、トランプ政権が課す関税が製造コストや供給体制に影響を及ぼす可能性は無視できない。

台湾当局は、関税が地域の製造業に「非常に大きな」影響を与えると警鐘を鳴らしており、これがNvidiaの製造基盤にも波及する可能性がある。しかし、NvidiaのCEOであるジェンセン・フアン氏は、必要に応じて他の施設に生産を移転する能力があると述べている。

これが実現すれば、同社は供給停止といったリスクを軽減できる。ただし、移転後の技術性能の維持やコスト管理には新たな課題が生じるだろう。また、Nvidiaは地政学的なリスクへの対応力を強化しており、関税適用前の在庫確保や価格調整といった戦略をすでに展開している。

同社の70%以上という高い粗利益率は、他社に比べて優位性を保つ重要な要素である。この利益率が、関税の影響を一部緩和する役割を果たすと考えられる。しかし、バイデン政権による中国へのチップ供給制限の検討も続いており、Nvidiaにとっては引き続き多面的なリスク管理が求められる。

AppleとNvidia、AI市場での長期的競争力はどちらに軍配か

AppleとNvidiaはともにAI市場を牽引する存在であり、トランプ関税が及ぼす影響は単純な比較では測りきれない。しかし、現在の状況を見る限り、Nvidiaはその高い粗利益率や強力な技術基盤によって優位性を確保していると言える。AIチップ需要の増加と新製品Blackwellチップの期待感も、同社の成長を後押ししている。

一方、Appleは中国市場依存度の高さが今後の課題となる。関税や地政学的リスクに直面する中で、製造拠点の多様化や製品価格の戦略的調整が急務となるだろう。同時に、トランプ政権が関税免除を認める可能性が残る点は、同社にとって重要な希望材料と言える。

総じて、AI市場における両社の競争力はそれぞれの強みと課題に依存しており、どちらが完全な勝者となるかは不透明である。ただし、Nvidiaが現時点で市場の期待に応える力を示している一方、Appleは長期的な戦略転換が求められていると言えるだろう。