Intelの新世代モバイルプロセッサArrow Lake-Hが、中国Bilibiliで公開されたレビューにおいて、その性能を鮮明に示した。特に注目されるのは、フラッグシップモデルのCore Ultra 9 285Hである。同モデルはCinebenchテストにおいてシングルコアで13%、マルチコアで26%の性能向上を達成し、競合Ryzen AI 9 365を凌駕した。一方で、消費電力制限下ではRyzen HX 370に大きく後れを取るなど、効率面の課題も浮き彫りとなった。
さらに、Alchemistベースの統合GPUによるグラフィック性能がレイトレーシングで際立つ結果を示すも、ゲーム分野ではAMDの優位が続く。この結果は、Arrow Lake-Hのアーキテクチャが持つ可能性と、同時に抱える課題を明確に示している。
Core Ultra 9の設計がもたらすパフォーマンス向上の理由
Core Ultra 9 285Hは、Lion CoveとSkymontアーキテクチャを採用し、6つのPコア、8つのEコア、2つのLPEコアを組み合わせた設計が特徴である。この構成により、従来のMeteor Lakeから大幅な性能向上を実現している。特にシングルコア性能が13%向上したことは、日常的な作業の応答速度やアプリケーションの動作効率に直接的な影響を与える。
さらに、Cinebench R23およびR24で示されたマルチコア性能26%の向上は、複雑なデータ処理や映像編集、AIモデルのトレーニングといった高負荷タスクでの強みを際立たせる。この性能は、Lenovoの最新IdeaPadシリーズを通じてテストされ、Golden Pig Upgrade Packがその信頼性を確認している。
この結果は、IntelがLPEコアの再導入を決断した背景を裏付けるものである。LPEコアはエネルギー効率を犠牲にしつつも特定タスクでの性能向上を追求した構造であり、モバイルプロセッサ市場において競争優位を得るための鍵となる可能性がある。
Arrow Lake-Hが抱える効率面の課題
Core Ultra 9 285Hは性能面で競合製品を大きく上回る一方、効率の低さが懸念される。特に、消費電力が50Wに制限された環境では、Ryzen AI 9 HX 370に大幅に遅れを取る結果となった。この現象は、Meteor LakeのSoCタイルを再利用した設計に起因する可能性が指摘されている。
デスクトップ版Arrow Lakeが同様の制限下でZen 5を凌駕していた事例と比較すると、モバイル向け設計の最適化不足が浮き彫りとなる。この課題についてTom’s Hardwareは、Intelが分散設計を導入した結果として発生した可能性があると分析している。
Intelが次世代アーキテクチャの効率性をどのように向上させるかが今後の焦点となる。これには、より高度な電力管理技術や、SoC全体の再設計が必要とされるだろう。高性能化と効率性の両立をいかに実現するかが、モバイル市場での成功を左右する重要な要因となる。
Alchemist+とRadeonのゲーム性能比較から見るGPU戦略の課題
Arrow Lake-Hに搭載される統合GPUは、Alchemistの改良版であるAlchemist+を採用している。3DMarkテストではレイトレーシング性能が従来比で88%向上するなど、合成ベンチマークでの優位性が顕著であった。一方、実際のゲームプレイではAMDのRadeon 880Mが依然として優位を保ち、Alchemist+の限界が浮き彫りとなった。
これは、Intelの統合GPU戦略が特定用途に最適化されている一方で、実用的なゲーム性能では競合に劣後していることを示唆している。ゲーム市場においては、AMDのRadeonシリーズがユーザーの信頼を得ている現状があり、Alchemist+の改良だけでは市場シェアの拡大が困難と考えられる。
今後の展望として、Lunar LakeのXe2が統合GPUのゲーム性能でRadeon 890Mを凌駕したことは、Intelの競争力を高める可能性を示している。だが、ゲーム性能だけでなく、汎用的な性能向上を目指す必要がある。Intelがこれをどのように達成するかは、業界全体の注目を集めるだろう。