アーク・インベストメントのCEO、キャシー・ウッドが2025年1月初週にパランティア株を1,700万ドル相当売却したことで注目を集めている。この売却は、同銘柄が2024年に365%もの株価上昇を記録し、評価への懸念が高まる中で行われたものだ。
一方で、パランティアは依然としてアーク・ファンドの主要保有銘柄であり、その成長見通しは極めて明るいとされる。同社のAI駆動型ソリューションの需要増加やS&P 500指数への組み入れが投資家心理を強化した。しかし、同株の高評価を巡る議論が再燃しており、モルガン・スタンレーは「アンダーウェイト」に格下げしリスクに警鐘を鳴らしている。
パランティア株の評価を巡る懸念と急激な株価上昇の背景
パランティアの株価は2024年に365%もの大幅な上昇を記録し、同社がAI駆動のデータ分析ソリューション市場を牽引する存在であることを証明した。この上昇はS&P 500指数への組み入れによる投資家の信頼感向上や、政府部門と商業部門双方での収益増加に裏打ちされたものである。特に、米国商業部門の収益は前年比54%増加し、政府部門も40%の成長を記録した。このような成長により、パランティアはAI業界のリーダーとしての地位を確立している。
しかし、同社の評価は依然として高く、株価売上高比率(P/S)が56.44倍、予想株価収益率(P/E)が146.15倍に達している。これらの指標は業界平均を大きく上回り、一部のアナリストは過剰評価の可能性を指摘している。モルガン・スタンレーのアナリスト、サンジット・シン氏は、現在の市場価格が極めて楽観的な成長シナリオを既に織り込んでいると分析し、目標株価を60ドルに引き下げた。この評価の乖離が株価の高いボラティリティを生むリスクをはらんでいる。
キャシー・ウッドの売却戦略が示す投資判断の一貫性
キャシー・ウッドは2024年12月以降、パランティア株の売却を断続的に続けており、その動きが市場で注目されている。例えば、2024年12月6日には95,570株、12月19日には33,402株、さらに12月末には168,510株を売却している。この一連の売却は、同社の株価急上昇を受けた利益確定の一環とみられる。
ウッド氏がCEOを務めるアーク・ファンドでは、ポートフォリオのバランス調整が頻繁に行われるが、今回の売却もその一環と考えられる。特に2025年1月初週の売却では、1,700万ドル相当の221,950株を手放しており、これは市場価格がピークに達していると判断した可能性を示唆している。ただし、パランティアは依然としてアーク・イノベーションETFの主要保有銘柄であり、ポートフォリオ全体の5.7%を占めている点に注意すべきである。これらの事実は、短期的な利益確定と長期的な成長期待のバランスを取るアークの投資戦略を反映している。
インサイダー売却と市場への影響
パランティアの高評価を巡る懸念をさらに増幅させているのは、同社幹部による積極的なインサイダー売却である。特にCEOアレックス・カープは2024年末に12億ドル以上の株式を売却し、会長ピーター・ティールも同時期に10億ドル以上を手放した。このような大規模な売却は、投資家心理に大きな影響を与える要因である。
さらに、ライアン・D・テイラー氏も最近、483,987株を売却し約3,605万ドルを得ている。これらのインサイダー取引は、幹部が現状の株価水準を割高と見なしている可能性を示唆している。一方で、同社の長期的な成長見通しは依然として堅調であり、AI市場での支配的な地位を背景に新たな契約や収益増加が期待されている。市場にとって重要なのは、これらの幹部売却が一時的な利益確定によるものか、それとも同社の成長に対する不信を示しているのかを見極めることである。