Appleは、MoffettNathansonの「売り」評価と目標株価引き下げを受け、市場での評価に揺らぎが生じている。その主因は、AI対応iPhoneへの消費者反応の鈍さ、中国企業との競争激化、Googleとの提携に関する規制リスクである。

さらに、Apple Intelligenceの機能が競合を凌駕するには至らず、業界内でAI競争の後れが指摘されている。一方で、WedbushはAppleの長期的成長を支持し、株価の大幅上昇を予測している。市場評価の分かれる中、同社のAI戦略が今後の成長を左右する重要な鍵となる。

AI技術に対する取り組みの遅れと競争環境の変化

Appleは、革新的な技術開発の象徴として長年の地位を維持してきたが、AI分野では後れを取っているとの指摘が増えている。特に、同社が新たに導入した「Apple Intelligence」は、メール作成やタスク管理といった基本機能に留まっており、競合他社の提供する高度な生成AI技術と比較すると大きな差がある。この点について、MoffettNathansonは、AppleのAI技術がOpenAIやGoogleに比べて成熟していないと厳しい評価を下した。

さらに、中国市場での競争激化も無視できない要因である。Huaweiを筆頭とする中国のテクノロジー企業が、AI搭載のスマートフォンやサービスで攻勢を強める中、Appleの市場シェアは脅かされつつある。これに加え、Googleとの提携に絡む反トラスト訴訟は、収益構造に新たな不確実性をもたらしている。これらの課題がAppleの長期的な成長にどのように影響するかは、今後の動向を見極める必要がある。

Appleが競争力を取り戻すには、革新をさらに加速し、競合との差別化を図る戦略が求められる。特に、AI技術をいかに収益に結びつけるかが今後の重要な課題となるだろう。

四半期業績が示す収益の多様化とその可能性

Appleは、第4四半期の業績において収益と利益で市場予想を上回った。収益は前年比6%増の949億ドルを記録し、特にiPhone販売とサービス収益が業績をけん引した。サービス分野の収益は250億ドルと過去最高を更新し、クラウドサービスやストリーミング、広告が重要な役割を果たしている。クックCEOは、この成長が新興市場と先進国市場双方での需要に支えられていることを強調した。

一方、ウェアラブル製品の売上は3%減少しており、製品カテゴリーごとの成長にばらつきが見られる。このような状況下で、Appleが収益源をさらに多様化することは喫緊の課題であると考えられる。同社がAI技術をサービス分野に統合することができれば、さらなる収益成長の可能性を秘めている。

Appleの財務健全性は依然として高水準にあり、500億ドルの現金保有と270億ドルのフリーキャッシュフローはその証左である。しかし、サプライチェーンの混乱やマクロ経済の圧力が続く中、安定した成長を確保するためには、新規市場の開拓とAI活用による収益の多様化が必要不可欠であろう。

投資家心理と評価の分岐点

ウォール街におけるAppleの評価は分かれている。MoffettNathansonの「売り」評価と目標株価の188ドルへの引き下げにより、慎重な見方が広がる一方で、Wedbushのダン・アイブスは強気の姿勢を崩していない。アイブス氏は、Apple IntelligenceとiPhone 16が記録的な販売を牽引し、市場価値を18カ月以内に5兆ドルまで押し上げると予測している。また、12カ月の目標株価を325ドルに引き上げるなど、将来性に対する信頼を示している。

一方で、現在の株価水準が過去5年平均と比べて依然として高いとする見解もあり、成長見通しが現行の評価を正当化できるかが焦点となっている。投資家心理は、業績予想や規制リスク、技術革新の進展によって大きく左右される。

Appleの株式は短期的なボラティリティが予想されるが、長期的には成長の余地を残していると考えられる。AI技術への取り組みとサービス収益の伸びが、同社の評価を再び押し上げる可能性があるかもしれない。