2025年第4四半期に投入予定の新型Armプロセッサ「N1」により、NvidiaがPC市場でIntelやAMDに挑む姿勢を鮮明にしている。MediaTekとの協力により、ノートパソコンやミニPC向けのWindows on Arm対応製品を展開する計画だ。
さらに、AI対応GPU「Blackwell」を搭載した「Project Digits」も公開され、Armベースの技術開発におけるNvidiaの意欲が示された。プロセッサ市場の二強体制に風穴を開ける可能性を秘めた新展開に、多くの関心が寄せられている。
NvidiaとMediaTekの提携が示すPCプロセッサ市場の変革

NvidiaがMediaTekと手を組むことで、PCプロセッサ市場に新たな競争の波が押し寄せようとしている。Tom’s Hardwareが伝えたところによれば、両社は「N1」と名付けられたArmベースのプロセッサを共同で開発し、2025年第4四半期にリリースを予定している。このプロセッサは、Windows on Armに最適化され、ノートパソコンやミニPCへの搭載を視野に入れている。さらに、2026年には「N1X」と呼ばれる上位モデルも計画されているとの情報もある。
MediaTekはこれまでChromebook向けプロセッサを手掛けてきたが、Nvidiaとの提携により消費者市場での影響力を拡大する構えである。2025年には300万個、翌年には1,300万個の出荷を見込むなど、その目標は高い。これにより、IntelやAMDが長らく支配してきたPC市場において、Armベース技術が急速に存在感を高める可能性がある。
この動きが業界全体に与える影響は甚大である。既存の二強体制が揺らぐことで、競争が激化し、価格や性能の改善が促進される可能性が高い。これまで限定的だったWindows on Armの普及にも新たな展望が開かれるだろう。
「Project Digits」に見るNvidiaの未来戦略
NvidiaがCES 2025で発表した「Project Digits」は、同社のArmベース技術への本格的な投資を象徴している。このミニPCには、「GB10 Superchip」と呼ばれるオールインワン設計が採用されており、RTX 50シリーズのアーキテクチャを基盤としたBlackwell AI対応GPUが搭載されている。このシステムは高性能AIアプリケーション向けに設計されており、消費者向けではなく主に専門用途をターゲットとしている。
同プロジェクトは、Nvidiaが単なるGPUメーカーにとどまらず、PC市場での新たな地位を築く意図を明確に示している。特に、AIブームによる資金調達力を背景に、プロセッサ技術全般への進出を図っている点が注目される。
ただし、このような高価格帯の製品が一般市場に広く受け入れられるかは未知数である。一方で、Nvidiaの技術力とブランド力を活かせば、消費者や企業向けの製品展開がさらに進む可能性も否定できない。PC市場全体を見据えた戦略的な布石として、今後の展開が期待される。
新興勢力が挑むIntelとAMDの牙城
NvidiaとMediaTekの提携は、IntelとAMDによる二強体制に挑む新たな動きとして注目されている。これまでプロセッサ市場では、性能と信頼性の両面でIntelとAMDが圧倒的なシェアを誇ってきた。しかし、近年の技術革新とAIの普及が、Armアーキテクチャを採用した新型プロセッサの可能性を広げている。
QualcommはすでにWindows on Arm市場において一定の成果を挙げており、今回のNvidia参入はさらなる競争を加速させるだろう。特に、既存のPC市場が飽和状態にある中で、Armプロセッサが新しい用途や市場を開拓する契機となる可能性がある。
IntelやAMDはこれに対抗し、独自技術の強化や次世代プロセッサの開発に拍車をかけるだろうが、競争激化が市場全体の活性化を促すことは間違いない。Nvidiaの動きは、消費者にとっても選択肢を広げるきっかけとなるだろう。