国際ビジネスマシン(IBM)の株価は年初来低迷が続く一方、同社の成長戦略が注目を集めている。特に、ハイブリッドクラウドや生成AIといった革新的技術への注力が、将来の成長を支える柱として期待される。

しかし、インフレや地政学的リスクといったマクロ経済的課題が、IBMのコンサルティング部門に大きな逆風をもたらしている。また、ドル高やIT支出削減のトレンドも、短期的な業績回復を難しくしている現状だ。

それでも同社は、AI駆動型ソリューションや新製品投入によるポートフォリオの拡充を図り、2025年に向けた市場拡大と競争力強化を目指す。長期的な見通しでは、利益率の改善とフリーキャッシュフローの増加が期待される。

ハイブリッドクラウド戦略がもたらす成長の可能性

IBMは、ハイブリッドクラウド領域への積極的な投資を通じて、成長の足掛かりを築きつつある。Red Hatの買収を契機に、企業向けの柔軟なクラウドソリューションを展開し、年間定期収益(ARR)は149億ドルに達した。この収益の増加は、AIやデータサービス、自動化技術といった複数分野の進展によるものとされる。また、生成AI技術を活用した製品群の新規予約額は10億ドルに上り、同領域での市場拡大を強力に後押ししている。

一方で、競争の激化や顧客のIT予算縮小といった課題も無視できない。特に、他のクラウド事業者が同様の技術開発を進める中で、IBMが差別化を図ることは容易ではない。だが、独自のAI統合クラウドプラットフォームとRed Hatの技術を組み合わせた付加価値提供が競争力を高める要因となる可能性が高い。これにより、同社は企業顧客の多様なニーズに応えるとともに、収益基盤の強化を目指している。

コンサルティング部門の停滞と再構築の道筋

コンサルティング事業は依然としてマクロ経済の逆風にさらされている。第3四半期の収益は期待値の下限に留まり、顧客の支出削減が影響しているとの分析が示された。特に、地政学的不安定要因やインフレ、金利上昇がIT支出全般に影響を与え、コンサルティング部門の成長を鈍化させた。

こうした状況に対し、IBMはポートフォリオミックスの再構築や営業レバレッジの改善に取り組んでいる。これにより、収益の多角化と安定化を図る戦略である。独自の考えとして、この戦略が成功すれば、従来のコンサルティング依存から脱却し、成長が見込まれる技術分野への比重を高めることで、安定した収益基盤を確立することが可能と考えられる。

ジェネレーティブAIがもたらす次世代の成長機会

生成AIはIBMの将来戦略において重要な位置を占めている。同社は生成AIプロジェクトに積極的に投資し、クライアント向けのカスタムAIアーキテクチャ開発を進めている。この分野の成果として、生成AIを活用した新規製品が取引部門で9%の収益成長を記録した。さらに、生成AIが企業の業務効率化や新たな市場開拓に寄与するとの見方が広がっている。

これに加え、生成AIはIBMのコンサルティング部門においても重要な役割を果たす可能性がある。同部門は生成AIを活用し、クライアントの業務改革やデジタルトランスフォーメーションを支援することが期待されている。この分野での成功が、コンサルティング事業の回復と市場競争力の強化につながるだろうと考えられる。