米製薬大手エリ・リリーが2024年度の売上予測を下方修正したことを受け、同社の株価は取引中に7%近く下落した。同社が製造する体重減少薬「マウンジャロ」と「ゼップバウンド」の第4四半期売上が予想を下回り、製品在庫が需要に追いつかなかったことが原因とされる。
第4四半期売上は約135億ドルと見積もられ、年間売上も450億ドルに留まる見通しだ。CEOのリックス氏は、2025年度に向けて増産計画を示し、体重減少薬の需要に応える姿勢を強調したが、市場の反応は冷静ではなかった。
体重減少薬の需要と供給バランスの課題
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エリ・リリーが製造する体重減少薬「マウンジャロ」と「ゼップバウンド」は、近年、急速に市場での需要を拡大させている。これらの薬剤は肥満や糖尿病治療の新たな選択肢として注目を集め、多くの患者が投与を希望している。しかし、同社が第4四半期で報告した売上は、予測を下回る結果となった。
特に、供給不足が売上低迷の一因とされ、在庫水準が需要増加に追いついていない点が浮き彫りになった。Visible Alphaのデータによると、アナリストの予測値を4.7億ドルも下回った点は、投資家に強い警戒感を与えた。
この供給課題は、エリ・リリーの生産体制におけるボトルネックを示唆している。CEOのリックス氏が掲げた「少なくとも60%以上の増産計画」は、需要に追随するための解決策として期待されるが、効果が現れるまでのタイムラグが懸念される。市場がこれにどう反応するかは、生産拡大の進捗と具体的な販売データの公表に依存すると考えられる。
増産計画が示す長期的な戦略的展望
エリ・リリーのリックス氏は、2025年度の売上予測を580億~610億ドルと発表し、増産による売上拡大への自信を示した。この数値は現時点でのアナリスト予測を上回る可能性を含み、企業としての成長意欲を反映している。同社は医療会議においてこれを発表し、さらなる信頼回復を狙っている。しかし、短期的な株価の下落に直面する中、増産計画がどの程度迅速に実現するかが重要な焦点となる。
この長期的な戦略には、薬剤の市場競争力を強化する狙いもある。体重減少薬市場は競合他社の参入が進む一方で、規制当局の審査も強化されている。エリ・リリーは、この市場でのリーダーシップを確立するため、研究開発や製造能力の拡大を急ピッチで進めていると考えられる。独自の分析として、同社がアナリストや投資家に対し、透明性の高い進捗報告を行うことが、市場の信頼を取り戻す鍵になるだろう。
株価下落の背景にある投資家心理と市場の期待
今回の株価7%近い下落は、売上予測引き下げに対する投資家の即時的な反応であった。746ドルという水準は、同社株が昨年12カ月間で17%以上上昇していた事実と対比すると、異例の動きである。投資家心理は、売上成長が停滞する兆候に対し敏感に反応しているとみられる。特に、第4四半期の売上予測が業界平均を下回ったことで、成長性に対する懸念が広がったことは否定できない。
しかし、長期的な視点では、エリ・リリーの株価は依然として高い水準を維持している。同社がこれまで築いてきた業績とブランド力は、短期的な不安定さを乗り越える基盤として機能するだろう。また、体重減少薬市場の成長性を考慮すれば、需要増加が安定する未来を見越して、株価が再び上昇する可能性もある。市場は冷静な分析を求められる局面にあると言えよう。