台湾積体電路製造(TSMC)の第4四半期決算発表を控え、同社株は再び市場の焦点となっている。AI関連シリコンの需要拡大を背景に、利益が114億ドルに達するとの見方が広がる中、投資家は246ドルの強気な価格目標や、190ドルと175ドルの重要なサポートレベルに注目している。
11週間に及ぶ上昇トライアングルをブレイクアウトした後、同株はトレンドラインを再テスト。価格モメンタムは依然強気を維持しており、決算結果次第ではさらなる上昇が期待される。市場は、米中関係を背景とした輸出規制や設備投資動向にも高い関心を寄せている。
TSMCの成長を支えるAI需要と業績予測
AI関連市場の急成長が、TSMCの業績を押し上げる主要な要因となっている。AIインフラストラクチャに不可欠な先進的なシリコンの需要は世界規模で増加しており、アナリストはTSMCの四半期利益が114億ドルに達する見込みであると指摘する。これに加え、同社の2024年売上高は前年比34%の増加を記録し、強固な成長基調が続いている。
TSMCは、NVIDIAやAMDといった大手半導体メーカーからの受注増加を背景に、AI用プロセッサ製造における技術的優位性を確立している。特に5ナノメートルや3ナノメートルプロセスでの製造能力が競争力を高めており、こうした先進的なプロセスへの投資が収益性をさらに向上させると期待される。一方で、米中間の技術競争による規制強化はリスク要因として残るが、同社は柔軟な生産体制でこれを乗り越える姿勢を見せている。
株価動向から見る投資家心理と注目レベル
TSMCの株価は、11週間続いた上昇トライアングルをブレイクアウトした後、再びトレンドラインをテストする局面に入っている。特に、206ドルの水準が上昇トライアングルの上限トレンドライン付近で一時的な支持を提供していたが、これを下回ると190ドル付近までの調整が見込まれる。この水準は、過去の高値や安値を結ぶ水平線と一致し、さらなる買い需要が見込まれる重要なサポートポイントとなる。
また、190ドルを明確に割り込む場合、投資家は175ドルという次の支持水準に目を向ける可能性が高い。この水準は200日移動平均線にも近接しており、長期的な価格支持の要として注目されるだろう。金曜日の終値から約18%上昇する246ドルの価格目標は、強気なシナリオとして投資家心理を支えている。これらの価格レベルは、短期的なボラティリティが続く中で、重要な売買判断の指標となる。
輸出規制と設備投資がもたらす影響
TSMCの成長戦略には、米中関係の影響が大きな懸念材料として存在する。半導体産業を取り巻く輸出規制や関税措置の強化が同社の収益構造に影響を及ぼす可能性があるため、投資家はこうした外部環境の変化にも注意を払う必要がある。TSMCはこれに対し、生産拠点の多角化や、新たな設備投資によるリスク分散を図る方針を示している。
例えば、米国アリゾナ州や日本熊本県における生産拠点の整備が進められており、これが同社の供給能力向上に寄与すると期待される。しかし、こうした巨額の設備投資が短期的に利益率を圧迫するリスクも否定できない。一方で、長期的には生産効率の向上や顧客基盤の拡大により、安定した収益源となる可能性が高い。技術革新と地政学リスクへの対応力が、今後のTSMCの持続的な成長を支える鍵となるだろう。