AMDは、次世代ノートPC用プロセッサ「Strix Halo」を発表し、モバイル環境での性能と効率性の新たな基準を提示する。このプロセッサは、16コアのZen 5アーキテクチャと40基のコンピュートユニットを持つRadeon GPUを搭載し、デスクトップ級の性能を提供することが特徴だ。
「手のひらサイズのThreadripper」と評されるこの設計は、電力効率を維持しながら高い演算能力を実現するため、特別なカスタムインターコネクトを採用している。モバイルワークステーション向けに開発された本製品は、ゲーミング用途にも対応可能な統合GPUを備え、RTX 4060を凌駕する性能を示すベンチマーク結果も報告されている。
さらに、過去のノートPC用CPUに見られたバッテリー寿命や熱管理の制約を克服する革新的な技術を搭載し、2025年初頭の市場投入が予定されている。この新CPUがもたらす影響に期待が高まっている。
モバイルプロセッサの新境地を切り開くStrix Haloのアーキテクチャ設計

Strix Haloは、AMDが従来のノートPC用プロセッサの枠を超えた新たな設計を導入したモデルである。このCPUは、2つのZen 5 CCDダイをカスタムインターコネクトで接続し、デスクトップ向けプロセッサの性能をモバイル環境で再現することを目指している。
これにより、低消費電力状態でありながら、高帯域幅かつ低遅延な通信を可能とする。この設計の肝は、32バイト/サイクルという双方向のデータ転送能力にある。このような技術的進化により、バッテリー消費や熱問題が従来モデルに比べて大幅に改善されるとされる。
独自のカスタムインターコネクトが提供する柔軟性は、AMDの他のプロセッサとは一線を画している。例えば、Strix Haloは電力状態を「ほぼ瞬時」に切り替えることができるという点で、従来のZen 4モデルを凌駕している。このような設計思想は、特に高度な演算を必要とするアプリケーションやモバイル向けワークステーションでの利用価値を高めるものといえよう。
ただし、このアーキテクチャの複雑性と高性能化が製造コストに影響を与える可能性があることもAMDシニアフェローのMahesh Subramony氏によって言及されている。
ゲーミング市場をも視野に入れたモバイルプロセッサの可能性
Strix Haloはモバイルワークステーション向けに設計されたプロセッサであるが、その高性能な統合GPUにより、ゲーミング用途にも対応可能である。実際、リークされたベンチマークによれば、この新型プロセッサは単体でRTX 4060を超える性能を示しており、Radeon RX 7600に匹敵するグラフィック性能を有する。
この性能は、特にゲーミングラップトップ市場において、競合製品との差別化を図るための重要な武器となり得る。また、この統合GPUが40基のコンピュートユニットを持つ点は、既存の製品ラインを凌駕する新たな基準を提示している。
この仕様は、ゲーミングだけでなく、Da Vinci Resolveのような映像編集ソフトウェアやCADソフトウェアなど、プロフェッショナル向けアプリケーションにも適しているといえる。ただし、モバイル向けという特性上、デスクトップ版プロセッサが持つピーク周波数には到達しない可能性がある点には留意が必要だ。
この点においても、AMDの設計は高性能と効率性のバランスを重視しているといえる。
市場投入が示唆する技術革新の影響
Strix Haloは、新たなZen 5アーキテクチャの可能性を最大限に活用し、モバイル環境における技術革新の象徴的な製品として登場する見込みである。従来のモバイルプロセッサが抱えていた熱管理やバッテリー寿命の問題を克服したこの製品は、2025年第1四半期にリリース予定である。
このタイミングでの市場投入は、競争が激化するモバイルワークステーション市場やゲーミング市場において、AMDの存在感をさらに強固なものにするだろう。しかし、製品の設計が高性能に特化している一方で、コスト面での課題が指摘されていることも事実である。
この点が消費者の選択にどのような影響を与えるかは注目に値する。また、このプロセッサが他のAMD製品や競合他社製品に与える影響についても検証が必要であろう。いずれにせよ、Strix Haloが示す設計思想は、今後のモバイルプロセッサの方向性を大きく左右する可能性がある。