独立型および統合型グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)の市場は活況を呈している。Jon Peddie Research(JPR)の最新調査によれば、世界のGPU出荷台数は前年比6%増となり、2億5100万台を超えた。PC出荷台数の微増(1%増)と密接に関連しており、特に上半期にはデスクトップ向けグラフィックスカードの出荷が前年同期比46%増という顕著な成長を記録した。

ただし、下半期には供給調整や製品ライフサイクルの影響により、第3四半期の出荷台数は前年同期比で減少。2024年通年の出荷台数は前年を上回る可能性が示唆される一方、2021年や2022年の水準には及ばないとの見通しがある。CPUとGPUの調達時期や季節的な需要変動もこの成長を左右する重要な要因といえる。

GPU市場の構造的変化と統合型GPUの拡大傾向

GPU市場では統合型GPU(iGPU)の重要性がますます高まっている。Jon Peddie Research(JPR)の調査によれば、クライアント用CPUのほぼすべてがiGPUを搭載しており、これがGPU出荷台数の増加を支えている。

デスクトップやノートPCに標準搭載されるiGPUは、システム全体の性能向上に寄与しながらもコスト効率が高く、多くの製品に採用されている点で競争力を持つ。一方、独立型GPU(dGPU)は高性能を求めるゲーマーやクリエイターに支持されるが、販売台数の増加はiGPUに比べて限定的である。

この市場構造の変化は、消費者のニーズが汎用性とコストパフォーマンスを重視する方向へ移行していることを示唆する。特に、リモートワークやデジタル学習の普及により、一般消費者がiGPU搭載のノートPCを選択するケースが増えている。企業にとっては、需要の多様化を的確に捉えた製品戦略が求められるだろう。

上半期の急成長と下半期の減速が示す市場の課題

2024年の上半期にはデスクトップ向けグラフィックスカードの出荷が前年同期比46%増という急成長を記録したが、第3四半期には前年同期比で減少に転じた。この背景には、AMDにおける在庫調整や「Ada Lovelace」および「RDNA 3」アーキテクチャの製品ライフサイクル終了が影響したと考えられる。

特に、製品の刷新が進むなかで、従来のモデルが市場で飽和状態に達している点が課題といえる。また、通常は第4四半期に新作ゲームの需要によりGPUの売上が伸びる傾向にあるが、今年はその動向が不透明である。

消費者の購買行動が不確実性を増す中、メーカーは短期的な市場の動向だけでなく、中長期的な需要予測を重視する必要があるだろう。販売計画と製品戦略の両面で柔軟性を持つことが、成長を維持する鍵となる。

グローバルサプライチェーンとGPU市場の相関性

グラフィックスカード市場の動向は、グローバルなサプライチェーンの影響を大きく受ける。特に、PCメーカーがCPUやGPUを製品に組み込む数か月前に購入を行うことから、市場の需要と供給にはタイムラグが存在する。このサプライチェーンの構造は、製品需要が高まる四半期においても部品調達が制約を受ける可能性を示している。

さらに、サプライチェーンの効率化や在庫管理の精度向上が業界全体の競争力に直結する状況である。出荷台数の変動要因として、物流コストや半導体製造の地政学的リスクも見過ごせない。メーカー各社は、これら外的要因を適切に管理しつつ、市場ニーズを捉えた製品供給を行うことで、持続的な成長を実現すべきである。