MicroStrategy(MSTR)は、仮想通貨戦略を通じた企業成長が再び注目される中、2024年に400%以上の株価上昇を達成し、2025年もその勢いを保っている。同社は45万BTC以上を保有し、ビットコイン最大の企業保有者として知られる。最近では、ウォール街のCantor Fitzgeraldが目標株価を518ドルから613ドルに引き上げ、70%の上昇余地を示唆している。

同社の戦略は「21/21戦略」に基づき、仮想通貨市場の動向を的確に捉えた資本調達と運用を特徴とする。しかし、第3四半期の収益低下や粗利益率の悪化も見られ、短期的な課題と長期的な成長の狭間で揺れている。このような中、2025年以降のパフォーマンスへの期待と不安が交錯している。

MicroStrategyが描く「21/21戦略」の狙いとは


MicroStrategyは独自の「21/21戦略」を掲げ、資本市場からの資金調達と仮想通貨への投資を加速させている。同社は21億ドルを負債で、さらに21億ドルを株式で調達し、ビットコインの大量購入を進める計画を進行中である。このアプローチにより、同社は短期間で180億ドルを調達し、仮想通貨市場での圧倒的な影響力を確立している。

Cantor Fitzgeraldの分析によると、MicroStrategyはさらに287,000 BTCを追加購入可能な資金を確保しており、これが市場に与える影響は無視できない。同社の資産運用モデルは、価格変動リスクを受け入れながらも高リターンを狙うものであり、その背景には市場全体の成長に対する信頼がうかがえる。この戦略は、トランプ政権の仮想通貨政策や市場動向を的確に捉えたものであり、現代の資本市場戦略の新たな指標ともいえる。

しかし、リスクも同時に存在する。ビットコイン価格の下落は、企業全体の財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。同時に、多額の負債が中長期的な経営安定性に与える影響も懸念材料である。MicroStrategyがこの戦略をどのように展開していくかは、他社にとっても重要な学びの機会となるだろう。


ビットコインと株価の連動性の中で問われる企業価値


MicroStrategyの株価は、同社のAIやソフトウェアといった中核事業ではなく、保有するビットコイン準備金に大きく依存している。特に2024年の株価急騰は、ビットコイン価格の上昇が直接的な要因であり、860億ドルという評価額は同社の実際の事業活動を反映したものではない。

この背景には、仮想通貨市場が株式市場において「代替資産」としての地位を築きつつある現状がある。しかし、ビットコイン価格の不安定性は、同社株価の乱高下を引き起こす要因ともなり得る。同時に、AIやデータ分析といった本業への注力不足が市場での評価を低下させる可能性も指摘されている。

一方、MicroStrategyが行うビットコイン投資は、従来の企業運営モデルを大きく変革する試みともいえる。この挑戦は成功すれば、株式市場における新たな評価基準を確立する可能性を秘めている。ただし、投資家はビットコイン価格の動向だけでなく、同社の本業の成長性も冷静に見極める必要がある。企業価値とは短期的な利益だけではなく、長期的な安定性と市場への影響力によって形作られるべきである。


第3四半期決算の課題と長期戦略の評価


2024年10月30日に発表されたMicroStrategyの第3四半期決算は、収益が前年同期比で10.3%減少し、1億1610万ドルとなった。同時に粗利益率が70.4%に低下し、同社の財務体質への不安が表面化している。このような収益減少は、AIやソフトウェア事業における競争の激化や市場シェアの維持が課題となっていることを示唆している。

一方で、現金残高が463億ドルに達していることは、同社の流動性の高さを裏付けている。これにより、追加のビットコイン購入や新規事業への投資余力があることが明らかである。Cantor Fitzgeraldが示した通り、同社にはさらなる資本調達手段が豊富に残されており、長期的な戦略を遂行する力を持つと評価できる。

しかし、収益減少は単なる一時的な現象ではない可能性がある。競争環境の変化や顧客ニーズの多様化に応じた製品開発の遅れは、企業の将来性に影を落とす要因となり得る。同社がビットコイン戦略に傾注する一方で、中核事業をどのように再構築していくかが今後の成長を左右する鍵となる。