ユナイテッドヘルス・グループは2024年の第4四半期において、アナリスト予想を上回る利益を記録した。しかし、医療費の上昇や加入者数の減少、メディケア料金引き下げなどが依然として課題となっている。同社の幹部が銃撃され死亡する衝撃的な事件が同時期に発生し、アメリカ国民の医療システムに対する不満が再燃した。
収益は7%増加し1008億ドルに達したものの、アナリスト予測には届かず、株価は年初から約4%下落。銃撃事件の影響もあり、同社が抱える社会的責任と業績動向が注目を集めている。
株価下落と医療費圧力の背景にある課題
ユナイテッドヘルスは2024年第4四半期に予想を上回る利益を計上したものの、医療費の高騰や加入者減少が業績の重荷となった。同四半期では収益の87%以上が医療費に充てられ、これはアナリスト予測を大幅に上回る割合である。高価な専門薬の処方増加やメディケア料金引き下げが、このコスト上昇の主な要因として挙げられている。さらに、約40万人のメディケイドプログラム加入者減少と、州政府による料金更新の遅延も同社の財務基盤を揺るがした。
これらの要因は、同社が直面する業界全体の課題を浮き彫りにしている。医療技術の進歩に伴うコスト増加は医療費の新たな圧力を生み出し、同時に政府支援プログラムの予算削減が利益を圧迫している。これに対し、同社は薬局給付管理部門や医療技術サポート事業の強化を進めることで対応を試みているが、短期的にはこれらの対策が収益構造を根本的に改善する可能性は不透明である。
銃撃事件が浮き彫りにした米国医療システムへの不信
12月初旬、ユナイテッドヘルスのUnitedHealthcare部門CEOであるブライアン・トンプソン氏が銃撃され死亡した事件は、米国内の医療システムに対する不満を改めて社会問題として露呈させた。この事件は、トンプソン氏がニューヨーク市で同社の年次投資家会議に向かう途中で発生したもので、26歳の容疑者が逮捕された。同氏の死をきっかけに行われた調査では、多くの国民が健康保険会社の利益優先主義や補償拒否に不満を抱えていることが明らかになった。
同事件は、単なる個人の悲劇にとどまらず、医療保険会社に対する社会的な責任を問い直す契機となった。特に米国では、医療費の高騰や保険制度の複雑さが医療アクセスを制限しており、これが広範な不信感につながっていると考えられる。ユナイテッドヘルスが最大規模の保険会社であることを踏まえると、同社が制度改革に積極的に取り組むか否かが業界全体に及ぼす影響は計り知れない。
サイバー攻撃と業績への深刻な影響
2024年初頭に発生したサイバー攻撃は、ユナイテッドヘルスの業績に大きな打撃を与えた。同社のChange Healthcare部門を対象としたこの攻撃では、業務の混乱と20億ドル以上の対応費用が発生し、年間利益が36%減少する結果となった。同社が提供する医療技術サポート事業の成長にもかかわらず、これらの予期せぬコストは同社の財務構造を揺るがした。
サイバー攻撃の頻発は、医療業界全体のリスクマネジメント体制の課題を浮き彫りにしている。患者データや業務システムが狙われるリスクは、規模の大小を問わず全ての医療関連企業にとって重大な脅威である。同社の事例は、単なる企業の内部問題ではなく、業界全体に対する警鐘として捉えられるべきである。