アメリカでデジタル資産への注目が高まる中、ワイオミング州とマサチューセッツ州が公的資金をビットコインに投資する法案を検討していることが明らかになった。ワイオミング州では投資対象をビットコインに限定し、基金の3%を上限とする制限を設けた。一方、マサチューセッツ州は「雨の日基金」の10%をビットコインや他のデジタル資産に充てる案を提案している。

この動きは、トランプ前大統領の支持者や暗号資産取引所CEOらが推進する「ビットコイン戦略準備金」の構想とも関連が深い。現在、5つの州が同様の法案を検討中であり、暗号資産が国家や地方自治体の財政戦略にどのような影響を与えるか、議論は広がりを見せている。

ワイオミング州の厳格な法案が示す財政戦略の変化

ワイオミング州では、州の財務官が公的資金をビットコインに限定して投資できる法案が提出された。この法案では、州基金の3%を上限とし、他のデジタル資産への投資を認めないという厳しい条件が設けられている。

このような制限は、デジタル資産の価格変動によるリスク管理や、州政府の財務の安定性を守る狙いがあるとみられる。また、過去に他の州で提案された類似の法案と比較しても、特定の資産に焦点を絞る点が特徴的である。

ワイオミング州がビットコインを選んだ背景には、同州が長年培ってきた暗号資産関連政策の推進が挙げられる。暗号資産を法律的に定義した先駆者としての役割を果たした同州は、ブロックチェーン技術を活用した州内経済の活性化を目指している。

一方、他のデジタル資産を排除する選択は、投資対象を広げた場合の不確実性への懸念があると考えられる。これは、投資の自由度を犠牲にする代わりに、安全性を優先する姿勢として評価されるべきだろう。

マサチューセッツ州の柔軟な提案が示唆する可能性

一方、マサチューセッツ州の提案は、ワイオミング州の法案と比べると柔軟性が高い。「雨の日基金」の10%までをビットコインや他のデジタル資産で構成することを認める内容は、暗号資産を多角的に活用しようとする同州の意向を反映している。

この提案は、州内の経済的な多様性を重視したアプローチといえる。同州では、これまでも金融イノベーションに関心を持つ投資家やテクノロジー企業が集まる傾向が強く、暗号資産市場への参入も自然な流れといえる。ただし、投資対象を広げた場合のリスクはより高くなるため、適切な監視体制が求められる。

この点について、CoinbaseのCEOブライアン・アームストロング氏が主張するように、暗号資産が国家安全保障に影響を与える可能性も念頭に置く必要がある。マサチューセッツ州の提案は、より幅広い経済的な可能性を探る試みとして注目される。

全国的な動きと暗号資産政策の未来

現在、アメリカの州議会の約5分の1がビットコインや暗号資産への公的投資を議論している。この動きは、トランプ前大統領が国家レベルでのビットコイン備蓄を提唱したことを契機に広がった。特に共和党主導の州での議論が活発化しており、地方政府が経済政策の選択肢として暗号資産を本格的に検討している状況が浮き彫りとなった。

これらの提案が進展すれば、アメリカ国内での暗号資産の地位が大きく向上する可能性がある。一方で、価格変動や規制の不確実性など、リスク要因も存在する。Coinbaseのアームストロング氏が述べるように、次世代の経済競争は宇宙開発ではなくデジタル経済で展開されるという考えは説得力がある。

このため、州レベルでの取り組みが連邦政府にも影響を与えることが予測される。暗号資産がグローバル経済の基盤としてどのように機能するか、その行方が注目されている。