世界的ブランドAppleの株価は過去5年間で約200%上昇し、その成長を支えたのは製品販売とサービス部門の拡大である。iPhoneを中心とするハードウェアは収益の柱であり続ける一方、サービス事業は5年で108%の成長を遂げた。
特に、iCloudやApple Musicなどの多岐にわたる収益源が高い粗利益率を支えている。しかし、2024会計年度時点でAppleの収益構造は転換期を迎えつつある。成熟化が進むiPhone市場と高いP/Eレシオが投資リスクを高める一方、AIや新技術の進展がサービス拡大の鍵を握る。
ウォール街の予測では、今後の株価上昇率が抑制される可能性が示唆されており、次の5年間は過去ほどの急成長が期待しにくい。
ハードウェア収益の柱と市場の成熟化
iPhoneをはじめとするAppleのハードウェア製品は、今なお同社の収益の大部分を支えている。2024会計年度では全収益の75%を製品が占め、その中でもiPhoneは売上の約半分を担う。16世代目となるiPhoneシリーズは、驚異的なブランド力と消費者の信頼を背景に、依然として市場を牽引している。
また、MacBookやiPad、AirPods、Apple Watchといった他の製品も安定した需要を維持しており、Appleのハードウェア全体の魅力を裏付ける形となっている。しかし、iPhone市場の成熟化が顕著となり、消費者の買い替えサイクルが長期化している現状は見逃せない。
特に価格の高さが障壁となり、新モデルへのアップグレード需要が鈍化する懸念がある。これにより、ハードウェア中心の成長戦略には限界があるとの見方が浮上している。Appleが引き続きハードウェア分野で競争力を維持するには、革新的な新技術の導入や価格戦略の見直しが求められるだろう。
サービス部門の急成長とAI戦略の課題
サービス部門は過去5年間で108%の成長を遂げ、2024会計年度の収益は960億ドルに達した。この成長は、Apple MusicやiCloud、Apple TV+などのプラットフォームを通じた多様な収益源に支えられている。この部門は高い粗利益率を持ち、Appleの全体的な財務状況を安定させる重要な役割を担っている。
また、これらのサービスが製品と一体となるエコシステムを形成している点は、他の企業にない強みといえる。一方、AI分野においては、Appleが競合に遅れをとるのではないかという懸念が過去に指摘されてきた。しかし、昨年末に「Apple Intelligence」というAI機能群を発表し、巻き返しを図っている。
この技術がユーザー体験をどれほど向上させ、サービス部門の収益に寄与するかが今後の焦点となる。ただし、AIに関連する競争が激化する中で、Appleが独自の価値をどのように創出するのか、さらなる戦略の明確化が必要である。
高いバリュエーションが示す投資リスク
Appleの株価収益率(P/Eレシオ)は2024会計年度で38.4と、過去10年間では稀に見る高水準にある。この数値は、Appleが依然として市場から高く評価されていることを示すが、同時に投資家にとってのリスク要因ともなる。
過去5年間で株価は約200%上昇したが、ウォール街の予測では今後5年間の成長率が鈍化するとされている。EPSの年率成長率が11.4%にとどまると見込まれる中、バリュエーションの低下が株価に影響を及ぼす可能性がある。
このような状況を踏まえると、Apple株は今後も安定したフリーキャッシュフローを生み出すだろうが、高リターンを期待するには慎重な姿勢が求められる。投資家は長期的な視点で、サービス部門の成長や新技術の展開を重視しつつ、市場全体の動向を注視することが重要である。