AI向け半導体の雄Nvidiaが過去5年間で2100%の株価上昇を遂げた一方、億万長者投資家たちはその株式を売却し始めている。イスラエル・イングランダーやヤン・ホウなどの大口投資家は、Nvidia株を削減する一方で、iShares Bitcoin Trust ETFを中心にビットコインへの投資を加速させている。この動きの背景には、Nvidiaが直面する輸出規制や競争激化、そしてビットコインの長期的な価値上昇への期待がある。
ARKインベストのキャシー・ウッドは、ビットコイン価格が10万ドルから380万ドルに達する可能性を予測し、ETFの価値が最大3700%上昇するとしている。この現象は、機関投資家がビットコインを「デジタルゴールド」として評価し始めた証拠と言える。Nvidiaの成長性を維持する一方で、ビットコインが次なる投資の中心になる可能性が議論されている。
AI市場をリードするNvidiaの課題と大口投資家の動向
Nvidiaは、AI向け半導体市場の中心的存在として躍進を遂げ、特にデータセンターGPUの需要増加に支えられ、過去5年間で株価が2100%もの上昇を記録した。しかし、その高い成長にもかかわらず、大口投資家たちが同社株の保有を縮小している点は注目に値する。
例えば、イスラエル・イングランダー率いるMillennium Managementは第3四半期にNvidia株の保有比率を12.5%削減し、ヤン・ホウのCapula Managementも27.7%削減を行った。これらの動きは、Nvidiaが抱える複数の課題を反映していると考えられる。
中国への輸出規制や独占禁止法の調査といった外部要因が、Nvidiaの成長に影を落としている。さらに、競争環境の激化も課題であり、他のAI向け半導体メーカーが市場におけるシェアを争う中、競争力維持のための投資負担は増加すると見込まれる。一方で、経済環境の変動はAI関連投資への支出を抑制する可能性があり、特に企業が慎重な支出姿勢をとる中では成長の鈍化も懸念される。こうした背景から、大口投資家がポートフォリオのリスクを分散させる動きを示していると言えよう。
ビットコインETFへの投資拡大が示唆する新たな戦略
Nvidia株の売却と対照的に、ビットコインETFへの投資が急増している点は興味深い。iShares Bitcoin Trust ETFを通じたビットコインへの投資がその中心にあり、イングランダーは1260万株を、ホウは110万株を取得した。背景には、ビットコインがデジタル資産市場で持つ独自の位置づけと、長期的な価値の可能性がある。
ビットコインは供給量が2100万枚に限定されており、定期的な「半減期」によって採掘報酬が減少する仕組みを持つ。こうした希少性が「デジタルゴールド」としての魅力を高め、価格上昇の要因となる。また、米国証券取引委員会(SEC)が現物価格ETFを承認したことで、ビットコインはより多くの機関投資家にとってアクセス可能な資産となった。この動きは、ARKインベストのキャシー・ウッドが提唱するビットコインの急騰予測とも呼応しており、彼女の3700%上昇という試算は市場の注目を集めている。
しかし、ビットコインには価格変動が激しい特性があり、その価値を正確に評価するのは困難である。投資家たちはこうしたリスクを理解しつつ、分散投資の一環としてビットコインETFを選択している可能性が高い。この選択は、従来の成長株投資から資産多様化へシフトする戦略の一部と捉えられる。
成長株とデジタル資産 どちらが未来を握るのか
Nvidiaのような成長株とビットコインのようなデジタル資産は、それぞれ異なるリスクとリターンの特性を持つ。Nvidiaはテクノロジー分野での圧倒的な競争力を背景に、持続的な成長を期待できる一方、既存の市場リーダーとして規制や競争といった外的圧力に晒されやすい。一方でビットコインは、価値の裏付けとなる実体資産を持たないが、希少性や需要増加といった独自の特性に基づいて長期的な上昇ポテンシャルが語られている。
大口投資家たちの動きは、この二つの資産クラスの将来性を比較し、リスク分散を図る意思を反映していると言えよう。特にNvidiaからビットコインETFへのシフトは、単なる短期的な市場変動ではなく、ポートフォリオ構築における戦略的な再配分と見るべきである。今後、規制環境や技術革新がどのように展開するかによって、どちらの資産クラスがより有利になるかが明確になっていくであろう。