30年間にわたり年平均リターン30%を達成した伝説の投資家スタンリー・ドラッケンミラーが、シティグループ株に新規投資を行ったことが明らかになった。2024年第3四半期に取引が公開されたこの株式は、有形純資産の0.9倍という割安な評価に加え、同業他社を凌駕する変革戦略が注目されている。CEOジェーン・フレイザーの主導で進行する事業の簡素化やIPO計画は、将来の収益性向上を見据えたものである。

また、シティグループは配当利回りの安定性とともに、200億ドル規模の株式削減プログラムや配当増加を計画しており、株主還元を重視した姿勢を示している。この戦略により、投資家の関心をさらに高める可能性がある。バークシャー・ハサウェイも保有するこの銘柄は、分散投資の新たな候補として多くの投資家にとって興味深い選択肢となるだろう。

ドラッケンミラーが選んだ理由:シティグループの割安評価と背景

シティグループ株が有形純資産の0.9倍で取引されている現状は、多くの投資家にとって注目すべき割安な評価である。同業のバンク・オブ・アメリカやJPモルガン・チェースと比較すると、過去10年間の株価パフォーマンスは低迷してきたが、現在の株価水準はその価値を見直す機会といえる。資産1ドルを0.90ドルで購入できるという点は、他の大手銀行株では見られない特異な魅力を持つ。

また、金融機関が抱えるリスクや競争環境を考慮すると、単純な割安性だけで投資判断を下すことは慎重さを要する。しかし、スタンリー・ドラッケンミラーがシティグループ株を選んだ背景には、現状の低評価と今後の戦略的な成長見込みの両方を評価した結果と考えられる。この点は、彼が過去30年間で市場平均を大きく上回るリターンを達成してきた実績とも一致する。

シティグループが評価を取り戻すためには、収益性の向上と市場の信頼回復が必須である。これまでの遅れを取り戻し、他行との競争力を高めるかどうかは、投資家にとっても注視すべき重要なポイントだろう。

CEOジェーン・フレイザーの改革:グローバル戦略の再構築

ジェーン・フレイザーが2021年にCEOに就任して以来、シティグループは大規模な事業再編に着手している。同社はグローバルで14市場の個人銀行業務から撤退を発表し、すでに9市場で業務を終了。ポーランドでは売却プロセスが進行中で、中国、韓国、ロシアなど複数の市場からもほぼ完全に撤退を果たしている。このような地域別の事業整理は、企業の効率性向上と収益基盤の強化を目的としている。

さらに、注目すべきはメキシコでの事業分離である。シティグループは「バナメックス」の一部事業を対象に新規株式公開(IPO)の準備を進めており、2025年末までに具体的な成果が見られる可能性がある。この戦略は、グローバル展開から重点市場への集中を象徴するものであり、過去の広範な事業展開による非効率性を解消する意図が明確である。

この改革の成功は、シティグループが新たな成長を遂げるための鍵となる。同時に、投資家に対しても未来の収益性向上を裏付ける証拠となる可能性が高い。一方で、IPOや事業整理が予定通り進まない場合、市場からの信頼をさらに損ねるリスクも存在する。

配当と株式削減が示す株主還元の姿勢

シティグループは、200億ドル規模の株式削減プログラムを計画しており、同時に配当金の増加も進めている。これにより、同社は投資家に対する利益還元を強化する意向を明確に示している。特に、現在の配当利回りが約3%という水準は、市場の不確実性が高まる中で安定した収益源として注目されるだろう。

株式数の削減は、1株当たり利益(EPS)の向上に寄与するだけでなく、株主の持分価値を高める効果がある。これは、配当金の増加と併せて投資家にとって魅力的なポイントとなる。さらに、利益の余剰分を活用したこの還元方針は、長期的な成長戦略と並行して進められることで、投資家に安心感を与える。

しかし、これらの施策が確実に成功を収めるためには、業務効率化と収益性向上が前提条件となる。現状の改革が成果を上げることで、この還元方針がさらに強化される可能性がある。ウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイも同社株を保有している点からも、シティグループの将来に対する一定の期待がうかがえる。投資家はこのような動向を参考に、ポートフォリオ構築の一助とすることができるだろう。

Source:The Motley Fool