トランプ政権が「アメリカ第一主義の優先事項」と題した文書を発表したが、暗号通貨やビットコインの戦略的備蓄はその中に含まれていなかった。この発表を受け、ビットコインは史上最高値の10万9000ドルから2%以上下落し、10万3735ドルに値を戻した。選挙キャンペーンで「アメリカを暗号通貨の中心地とする」と公約していたトランプ氏が、この方針を二期目の政権の主要施策に含めなかったことにより、暗号市場では失望感が広がっている。
一方、CFTCおよびSECのトップに暗号通貨支持者を任命したことで、規制環境の進展に対する期待は一定の熱を保っている。
トランプ政権の政策文書が示す暗号市場への影響
トランプ政権が発表した政策文書「アメリカ第一主義の優先事項」は、暗号通貨規制やビットコイン備蓄に関する記載を欠いていた。この動きは市場における暗号通貨の地位低下への懸念を呼び起こしている。同文書は三つの主要カテゴリに分かれており、経済政策、国防、安全保障が強調されたが、暗号通貨規制への具体的な指針は含まれていない。トランプ氏は選挙期間中に「暗号通貨の中心地を構築する」と宣言していたが、就任後の政策で暗号市場を直接支える措置が見られない現状は、投資家心理に影響を与えている。
こうした動向は、政府の優先度が移り変わる中で暗号通貨がどの位置に置かれるかを問い直す契機となる。例えば、経済政策が従来型のエネルギー投資やインフラ整備に偏る一方で、急成長分野であるデジタル資産市場が軽視されるならば、規制環境の整備も後回しになる可能性が高い。これにより、業界の成長が停滞する懸念がある。
プロ暗号派の登用に秘められた規制政策の意図
トランプ氏がキャロライン・ファム氏をCFTC代理議長に、マーク・ウイエダ氏をSEC代理議長に任命した背景には、デジタル資産規制の方向性を模索する意図があるとみられる。両者ともにデジタル資産の規制整備を推進する立場で知られ、特にファム氏は「明確かつ公平なルール作り」の重要性を訴えてきた人物である。この任命が短期的な政策優先度の低下にもかかわらず、規制進展への希望を市場に残している。
これらの人事は、米国内での暗号通貨規制が単に優先度の問題ではなく、長期的な戦略に基づく可能性を示唆する。例えば、物議を醸しているSAB121やFIT21法案についても、これらの専門家による具体的な対応が期待される。短期的な価格変動とは別に、規制が整うことで市場が安定し、グローバルな競争力を高める道筋を模索する動きが注目される。
トランプ政権の暗号通貨政策の不透明性とその示唆
暗号通貨を政権の主要課題としない一方で、トランプ政権は明確な否定的態度も示していない。これは、戦略的に意図的な「曖昧さ」を保持している可能性がある。例えば、大統領令の内容には言及されないものの、デジタル資産を巡る議論が主要政策の裏側で進行している可能性も指摘されている。こうした不透明性は、投資家や市場参加者にとって短期的には不安定要因となり得るが、同時に長期的な政策変更の余地を残す形でもある。
独自の視点として、トランプ政権が暗号通貨市場を外交や経済政策の交渉カードとして活用する戦略も考えられる。特に、グローバル市場における競争力を背景に、将来的にビットコインや他の暗号通貨を国家戦略に組み込む展望が排除されるわけではない。市場は、この曖昧さを「潜在的な転換点」として捉え、慎重な観察を続けるべきである。
Source:FXStreet