暗号資産の支持者で知られるマーク・キューバンが、ドナルド・トランプ元大統領が推進するミームコイン「TRUMP」に対し痛烈な批判を展開した。このプロジェクトは市場への投入直後に不安定な価格変動を示し、供給の大部分が特定の企業に保持されている点で議論を呼んでいる。キューバンはこのミームコインが投資家保護や業界の正当性を脅かす可能性を指摘し、規制当局がより厳格な対応を取るべきだと警告した。
トランプ陣営が推進するこのプロジェクトは、法的な不透明性やインサイダー優遇の疑念を強めており、業界全体が抱える根本的な課題を露呈している。価格が急騰と急落を繰り返す中、議員や専門家からも厳しい批判が相次いでおり、これが規制強化の引き金となるか注目される。
トランプ陣営のミームコイン戦略とその波紋
ドナルド・トランプ陣営が推進するミームコイン「TRUMP」は、供給の80%がCIC Digital LLCおよびFight Fight Fight LLCに保持され、これらのトークンが今後3年間にわたり徐々に市場に解放される仕組みを持つ。この構造は投資家の間で懸念を呼び、特定の団体による市場操作や価格の乱高下が指摘されている。TRUMPの価格は、発表直後に一時73ドルに達したが、その後急激に40ドルまで下落した。この不安定な動きは、特に暗号資産市場に慣れていない投資家にとってリスクが高いとされる。
こうした状況に対し、暗号資産分野の専門家や議員の間では批判が相次いでいる。Centrifugeの法務顧問であるイーライ・コーエン氏は、「このローンチは、アメリカが今後行うすべての規制が自己利益のためと見なされる恐れがある」とコメントした。加えて、特定企業への利益偏重が疑われる中で、規制当局がどう対応するかが注目される。このプロジェクトが業界全体の信頼を損なうリスクがあることは否定できない。
マーク・キューバンが指摘する暗号資産規制の必要性
マーク・キューバンは、TRUMPコインの出現により、暗号資産業界が規制を回避する方向に進む危険性を指摘した。彼はX(旧Twitter)で、このミームコインが「投資家が購入するものを理解しない基準を作りかねない」と述べ、投資家保護がなおざりにされる懸念を示した。さらに、「ゲイリー・ゲンスラー(SECの前議長)は笑いが止まらないだろう」と皮肉を交え、適切な規制の必要性を訴えた。
アメリカでは、下院で可決された「21世紀のための金融革新と技術法案(FIT21)」が、暗号資産の規制枠組みを提供する可能性を持つ。しかし、上院では保留されており、法制化の見通しは立っていない。キューバンは、TRUMPのようなプロジェクトがこうした法案の進展を妨げる可能性があると危惧している。この背景には、規制の不透明性や市場の混乱が新たな投資家の参入を妨げる要因となるという認識がある。
暗号資産市場におけるミームコインの将来像
ドージコインはその初期のジョーク的存在から成長し、今や530億ドル規模の市場を誇るまでになった。一方で、TRUMPのような新規ミームコインは、ドージコインの成功を模倣しようとするが、その本質的な要素やコミュニティの成長が欠如していると批判されている。マーク・キューバンは、「TRUMPには明確なコミュニティの構築が見られず、高リスクのゲームに過ぎない」と指摘した。
このようなミームコインの乱立が市場全体に与える影響は大きい。特に、価格変動が激しいことで投資家心理が冷え込み、市場全体の信頼性を損なうリスクがある。専門家は、暗号資産が長期的な成長を遂げるには、単なるトレンドに依存するのではなく、持続可能な価値を提供することが重要だと指摘する。暗号資産市場は、規制強化と同時に、ミームコインのようなリスク資産への対応策を模索する必要があるだろう。
Source: Decrypt