ドナルド・トランプ氏が就任演説で暗号資産に言及しなかったことが市場に波紋を広げている。同氏が選挙中に暗号資産支持を公言し、業界から期待を集めていた背景もあり、発言を期待した投資家の間で失望感が広がった。結果として、ビットコイン価格は10万ドル近くまで下落し、約1億ドルのポジションが清算される混乱が生じた。

一方で、トランプ氏の政策全体が暗号資産に敵対的というわけではない。報道によれば、暗号資産評議会の設立や執行命令への署名が予定されており、同氏の姿勢は依然として「強気」と評価されている。キャロライン・ファム氏をCFTC代理委員長に任命するなど、市場の監視体制を整える動きも進行中である。市場は今後の政策展開を注視している。

トランプ氏の政策転換と市場への影響:具体的施策の裏側

トランプ氏の暗号資産政策は、多くの投資家に期待を抱かせる要因であった。同氏は選挙期間中、規制緩和を掲げ、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の開発阻止を明言するなど、業界の声を反映した姿勢を示してきた。しかし、就任演説ではこうした暗号資産への具体的な支持を直接的に語ることはなく、投資家心理に動揺を与えた。ロイターの報道によれば、トランプ氏は暗号資産評議会設立を予定しているが、その詳細は明らかになっていない。

一方で、SECが施行した「SAB 121」の無効化に向けた執行命令に署名する可能性が示唆されるなど、規制の見直しに積極的な姿勢も見受けられる。このような政策は、規制による業界の発展阻害を懸念する関係者にとって希望の光となり得る。しかし、こうした施策の実現性や実際の影響は、政策の具体化と実施プロセスに依存するものである。市場はその進展を見守る段階にある。

CFTCへのキャロライン・ファム氏起用の背景と意図

トランプ氏がCFTC代理委員長に任命したキャロライン・ファム氏の役割は、暗号資産市場の規制強化において極めて重要である。ファム氏はデジタル資産市場小委員会を設立し、規制枠組みの策定を主導するなど、業界で高く評価されてきた実績を持つ。彼女が提唱する「米国規制サンドボックス」構想は、イノベーションを阻害することなく市場監視を強化する目的を有しており、トランプ政権下での主要施策の一環と見られる。

この人事の背景には、SEC委員長ゲイリー・ゲンスラー氏の退任も関連している。ゲンスラー氏は暗号資産に対して厳格な姿勢を取り続けていたが、その交代により、業界にとっての転換点が訪れる可能性がある。しかし、ファム氏の方針が市場全体の成長を促進するか、それとも新たな規制の枠組みが予期せぬ摩擦を生むかについては、今後の政策次第であると言える。

演説の沈黙が示す暗号資産政策の行方

トランプ氏の演説で暗号資産が明確に語られなかった背景には、政策上の慎重な立ち位置が伺える。同氏は就任初日にイノベーションを称賛し、探検や革新を掲げる発言を行ったが、これが暗号資産を含むかどうかは解釈の余地がある。具体的な政策の言及が欠如していたことは、一部の投資家に懸念を与えたものの、同時に暗号資産関連施策の実現への期待感を完全に打ち消すものではない。

これに加え、ホワイトハウスが発表した「トランプ大統領のアメリカ優先主義の優先事項」にも暗号資産関連の明記がなかった。この状況が一時的な戦略に過ぎないのか、それともより広範な政策転換の兆候なのかは、今後の政策や発表にかかっている。市場の反応が敏感であるだけに、政権が打ち出す次の一手が、短期的な価格変動以上に、暗号資産市場の中長期的な基盤に影響を与える可能性が高い。

Source:Coinpedia Fintech News