ファイル圧縮ソフトウェア7-Zipにおける脆弱性が、Windowsの「Mark of the Web(MoTW)」セキュリティ機能を回避する危険を生じさせた。この脆弱性を悪用することで、攻撃者はユーザーのコンピュータ上で悪意あるコードを実行する可能性がある。
この問題は、2024年11月30日にリリースされた最新バージョン「7-Zip 24.09」において修正されたが、7-Zipは自動更新機能を持たないため、多くのユーザーが依然として旧バージョンを使用している。これにより、攻撃者が脆弱性を利用し、マルウェアを拡散するリスクが残されている。
Microsoftや他のセキュリティ研究機関が指摘しているように、過去にもMoTW回避の脆弱性がDarkGateマルウェアなどの展開に利用された事例がある。金融目的で活動するハッカーグループが類似の手法を用い、ターゲットのPCにリモートアクセス型トロイの木馬(RAT)を仕込む攻撃も報告されている。
これらの背景から、ユーザーが迅速に最新バージョンを適用することが喫緊の課題といえる。
7-Zipの脆弱性が及ぼす実害とその背景にあるリスク
7-Zipの脆弱性「CVE-2025-0411」は、WindowsのMark of the Web(MoTW)セキュリティ機能を回避する形で悪用される可能性が指摘されている。この脆弱性により、攻撃者は悪意のあるファイルをユーザーに開かせることで、マルウェアを展開できる環境を作り出す。
特に企業や公共機関における情報漏洩やシステム障害のリスクが高まり、被害が甚大化する恐れがある。背景には、7-Zipが広範囲に使用されている事実がある。無料かつ多機能であるため、個人ユーザーだけでなく、多くの業務環境で標準ツールとして採用されている。
この普及度の高さが、攻撃者にとって魅力的な標的となっているのは明らかである。Trend Microのアドバイザリによれば、攻撃を実行するためにはユーザーが悪意あるファイルを開く必要があるが、メールやウェブサイトを通じた巧妙な手法により、被害が拡大する可能性は否定できない。
一方で、セキュリティ更新が行き渡らないという問題も見逃せない。7-Zipには自動更新機能が備わっていないため、ユーザーの手動アップデートが必要となる。しかし、これが実施されない場合、脆弱性は恒久的なリスクとして残ることになる。この状況を受けて、企業のIT管理者や個人ユーザーには、早急な対応が求められる。
MoTW機能が果たす役割と限界
MoTWは、Windowsがファイルの信頼性を評価する上で不可欠な機能である。この機能は、Zone.Identifierストリームを通じてファイルの出所を明示し、不審なファイルが開かれるのを防ぐ仕組みを提供している。しかし、7-Zipの脆弱性が示す通り、MoTW機能には回避の余地が存在することが明らかとなった。
特に、7-Zipのような第三者ソフトウェアがこの機能をサポートする際には、その実装において脆弱性が入り込むリスクが伴う。例えば、2024年にMicrosoftが修正したMoTW回避脆弱性(CVE-2024-38213)では、正規のソフトウェアに偽装したマルウェアがDarkGateオペレーターによって配布されていた。
こうした事例は、MoTWの重要性を再確認させる一方で、100%の防御策ではないことも示唆している。これを踏まえ、利用者側のセキュリティ意識の向上が不可欠である。たとえば、不審な送信元からのファイルを安易に開かない、ファイルが警告を発する場合には慎重に判断するといった基本的なセキュリティ対策が必要である。
また、システム管理者においては、MoTWに依存しすぎない多層的な防御戦略を採用することが望ましい。セキュリティソフトウェアやファイアウォールとの連携により、リスクを分散させることが効果的といえる。
自動更新の欠如がもたらす課題と解決策
7-Zipが広く利用される一方で、同ソフトウェアが自動更新機能を備えていないことが、脆弱性対策の遅れを助長している。多くのユーザーはセキュリティ更新の重要性を理解しているものの、手動でのアップデートは煩雑であり、結果として対応が後回しになるケースが多い。こうした状況が攻撃者にとって好都合な環境を生み出している。
この問題を解決するためには、ユーザー側の意識改革に加えて、開発者側での対応強化が求められる。自動更新機能の実装は、その一環として極めて重要である。また、公式ウェブサイトや関連メディアを通じた積極的な広報活動も有効であろう。
さらに、7-Zipを利用する企業や組織においては、ソフトウェア管理を徹底することが重要である。たとえば、セキュリティパッチの適用状況を定期的に監査し、必要に応じて迅速に更新を行うプロセスを構築することが推奨される。これにより、脆弱性の放置によるリスクを最小限に抑えることが可能となる。
Source:BleepingComputer