半導体市場で長年の地位を築いてきたインテルだが、近年は競合他社に押され株価が低迷している。過去5年間で66%、直近12か月で55%も下落した株価は、特に買収の憶測が高まる中で注目を集めている。2024年第3四半期には売上が市場予想を上回る一方で、粗利益率の大幅な低下と巨額の損失を計上した。同社は大規模なコスト削減を進める一方で、AIやファウンドリ事業など成長分野への投資を強化。5年間で1,000億ドルの投資計画を掲げ、技術革新を推進している。

しかし、インテル株は依然として割安感がありながらも、アナリストの評価は「保留」が大半を占める。同社が転換期を乗り越え、AIや次世代技術での成果を市場に示すことができるかどうかが、今後の投資判断の鍵を握る。

インテルの粗利益率低下と戦略的転換の背景

インテルは2024年第3四半期に133億ドルの売上を記録し、市場予想を上回る結果を示したものの、粗利益率は前年同期の42.5%から15%へと劇的に低下した。この要因として、競争激化による価格圧力、製造コストの増大、そして戦略的な投資負担が挙げられる。同時期には90億ドルの営業損失と166億ドルの純損失が計上され、同社の収益構造に深刻な課題が浮き彫りとなった。

さらに、インテルは人員削減による効率化とコスト削減を目指し、2025年までに100億ドルのコスト削減計画を発表した。この動きは短期的には損益改善をもたらす可能性があるが、組織のスリム化が成長分野への対応力を制約するリスクもある。特に、AIやクラウド市場での競争が激化する中、迅速な対応が求められている。

同社の利益率低下は構造的な問題だけでなく、事業の将来性を賭けた大胆な投資の表れともいえる。これが長期的な競争力の強化につながるのか、あるいは短期的な損失が信頼を損ねるのか、今後の展開が注目される。


AI市場におけるインテルの競争戦略

インテルはAI対応PCの出荷が1億台を超える見通しを示しており、AI分野でのプレゼンス拡大を強調している。また、第3四半期にはファウンドリ事業で44億ドルの収益を計上し、Amazon Web Services(AWS)との提携など具体的な成果を上げた。これらの取り組みは、AIやデータセンター市場で競合他社に遅れを取る中での挽回策として注目される。

しかし、競合するNvidiaやAMDがAI市場での優位性を強化している中、インテルの技術力と市場シェアの回復には課題が残る。特にNvidiaが独占的なGPU市場を制している状況下で、インテルがどのように差別化を図るかが焦点となる。同社の独自性を示す鍵は、製造能力の強化と価格競争力の向上にあるだろう。

さらに、AI対応PCの需要は今後数年で拡大すると予測されており、インテルの戦略が的を射たものである可能性が高い。しかし、消費者と企業の需要動向次第では、その効果が限定的になるリスクも否めない。


買収憶測とインテルの将来展望

2025年1月時点で、インテルに対する買収憶測が市場で話題となっている。半導体市場で競争が激化する中、SemiAccurateの報告ではインテルが買収ターゲットとなる可能性が示唆された。この背景には、同社の株価が過去5年間で66%、直近12か月で55%も下落していることがある。現在の時価総額は940億ドルと評価され、割安感を持つ投資対象として関心を集めている。

一方、インテルは大規模な投資計画と戦略的な成長分野への進出を強化しており、独自の再建路線を模索している。同社の次世代技術への投資は、買収の憶測を払拭する一因となる可能性もある。しかし、短期的な業績悪化が続けば、企業価値を高める努力が市場の疑念を払拭するには至らない恐れもある。

インテルが自律的に復活を遂げるのか、あるいは市場の期待が外部要因に依存するのか。その行方は、技術革新の成果と経営判断の的確さにかかっている。

Source:Barchart.com