投資の世界で比類なき実績を持つウォーレン・バフェットは、2025年に向けた戦略として自社株買戻しに再び注目を集めている。市場が人工知能(AI)への過剰な熱狂に包まれる一方で、バフェットは冷静な姿勢を保ち、2023年に多額の資産を現金化。
バークシャー・ハサウェイの現金保有額は3252億ドルに達しており、過去最大規模となった。バフェットの自社株買戻しは過去25四半期にも及ぶが、新たな法人税引き下げの可能性が追い風となる。バークシャー株はその価値の適正性が基準とされ、買戻しの動向は投資家にとって重要な焦点となりつつある。
バフェットが蓄えた巨額現金、その背景と狙い

バークシャー・ハサウェイの現金保有額が史上最高の3252億ドルに達した事実は、ウォーレン・バフェットの先見性を強調するものだ。この資金増加の背景には、2025年に向けた市場調整の可能性を見越し、主要株式の一部売却という決断がある。特に、ポートフォリオの半分以上を占めていたアップル株の比率を23%以下に削減したことや、バンク・オブ・アメリカ株を約4分の1売却した事実は、市場の過剰評価に対するバフェットの警戒感を映し出している。これにより、リスクを抑えつつ、将来的な投資機会に備えるという目的が明確となった。
この動きは、金融政策や景気後退リスクを見据えた防衛的戦略とも言える。バフェット自身がキャッシュポジションを「火災保険」に例えたように、この巨額の現金は市場混乱時に競争優位を保つための重要な資源となるだろう。市場がAI関連の投機的熱狂に支配される中、この現金はバフェットが冷静さを保つための武器となり、安定した投資戦略の象徴ともいえる。
法人税率の変化が投資戦略に及ぼす影響
トランプ政権時代の法人税率引き下げは、企業経営に大きな恩恵をもたらし、株式買戻しを促進する重要な要因となった。特に、税率が35%から21%へ引き下げられたことで、バークシャー・ハサウェイは資本コストの削減と簿価の増加を享受した。このような政策の影響は、バフェットの投資判断にも影響を与えた可能性が高い。
現在、さらなる減税提案が議論されており、国内生産を行う企業に対する税率を15%に引き下げる案も含まれている。この政策が実現した場合、バークシャーに与える直接的な効果は限定的であっても、全体的な経済環境の改善が株価上昇を後押しする可能性がある。バフェットが政策の影響を冷静に見極め、自社株買戻しに再度動く可能性を指摘する専門家もいる。特にバークレイズ・キャピタルの試算によれば、税制変更はバークシャーの簿価に290億ドル以上の影響を与えるとされている。
自社株買戻しの戦略的価値と投資家への示唆
バフェットが長期にわたり自社株買戻しを行っている事実は、バークシャー株に対する深い信頼を象徴している。2017年のルール変更により、自社株が簿価の120%に達しない限り買戻しできなかった制約が緩和され、バフェットが株価の適正性を判断できる柔軟性が生まれた。これにより、彼は市場の過熱感に左右されることなく、価値のあるタイミングで戦略的に株を買い戻す道を選んでいる。
この動きは、投資家に対して重要なメッセージを発していると言える。それは、企業が自社株買戻しを行う際には、単なる資本政策以上の意図がある可能性があるという点だ。バフェットの行動は、投資先としてのバークシャー・ハサウェイの安定性を示すと同時に、投資家が企業価値をどのように判断すべきかを再考させる契機となる。2025年に向けたバフェットの動向は、他の投資家にとっても一つの指針となる可能性が高い。
Source:24/7 Wall St.