半導体業界での競争が激化する中、サムスンは2024年のファウンドリ部門への設備投資を35億ドルに半減する計画を明らかにした。これにより、同社の投資額は前年度の半分以下となる。主な要因として、顧客需要の減少や生産効率向上を目指した戦略が挙げられる。
一方、TSMCやインテルなどの競合他社は、先進プロセス技術への対応や生産能力の増強に向けて投資を拡大している。サムスンは既存設備のアップグレードに焦点を当てる方針で、韓国国内の主要施設を中心に生産ラインの改修を進める予定である。
しかし、これにより市場競争力を維持できるかは未知数であり、業界全体への影響が注目される。特に、TSMCの2nm技術への積極的な投資が先行する中で、サムスンの立場は厳しさを増していると言える。
サムスンの投資戦略転換 背景にある市場変化と課題
サムスンがファウンドリ部門への投資を半減する背景には、顧客需要の低迷があるとされる。TrendForceによる報告では、4~7nmクラスの製造ライン稼働率が30%以上低下していると指摘されており、特に平沢工場での影響が目立つ。
先進プロセス技術における歩留まり率の低さも課題として浮上しており、大規模顧客の獲得が困難な状況が続いている。これらの問題は、競合他社との技術競争におけるサムスンの課題を浮き彫りにしている。市場環境の変化も重要な要素である。
世界的な半導体需要の変動は、サムスンの収益モデルに直接的な影響を与えている。需要減少の一因として、パンデミック後の消費財市場の鈍化や、地政学的なリスクによるサプライチェーンの影響が挙げられる。
サムスンがこうした市場動向に柔軟に対応するために、効率化を最優先する戦略へシフトしたことは理にかなっている。しかし、この選択が競争力の維持に十分であるかは未知数であり、さらなる取り組みが必要となる可能性が高い。
TSMCやインテルが描く投資の方向性とサムスンとの対比
TSMCは次世代の2nm技術に対応するため、380億~420億ドルという巨額の投資を計画している。同社は生産能力の拡大に加え、特殊技術や先進パッケージングに注力する方針を打ち出している。この動きは、次世代プロセス技術でリードを維持しつつ、顧客基盤をさらに拡大することを目的としている。
一方、インテルは18A製造プロセスを基軸とした戦略を展開しており、2025年までの設備投資額を増加させる計画だ。両社が積極的に投資を拡大する中、サムスンの投資削減は対照的な戦略といえる。サムスンの選択は効率性を重視した現実的な判断とも取れるが、競合他社が進める巨額の投資は、市場における技術的リードの差を広げる可能性がある。
特に、TSMCが2nmクラスの量産を2025年後半に開始するとされる中、サムスンの既存設備改修という方針は、短期的な利益確保には寄与する一方、長期的な競争力には懸念を残す。一方で、サムスンの効率化戦略が予想以上の成果を上げる場合、限られたリソースで最大の成果を引き出すモデルケースとなる可能性も否定できない。
投資削減がもたらす業界全体への波及効果
サムスンの投資削減は、自社にとどまらず半導体業界全体に影響を与えると考えられる。ファウンドリ市場における競争は、顧客企業が選択するパートナーの多様化を促進する一方で、特定の技術ノードにおける供給量不足を招く可能性がある。
特に、先進プロセスに依存する業界では、技術開発の停滞やコスト上昇といった副次的な影響が懸念される。さらに、地域的な影響も無視できない。サムスンが主に韓国内での投資を縮小する一方で、TSMCやインテルがグローバルな生産能力拡大を進める状況は、半導体生産の地理的バランスに変化をもたらす可能性がある。
これにより、新興市場における技術基盤の構築や、各国政府の補助金政策にも影響が及ぶことが考えられる。サムスンがこうした変化にどのように対応するかが、今後の業界の方向性を左右する重要なポイントとなるであろう。
Source:Tom’s Hardware