ドナルド・トランプ米大統領が暗号資産に関連する初の大統領令を発令した。この命令により、デジタル資産市場の政策を助言するための大統領ワーキンググループが正式に設立され、国家戦略としてのデジタル資産の備蓄可能性が模索される見通しである。ワーキンググループは20人の業界リーダーから構成され、米国のデジタル金融技術のリーダーシップ強化を目指す。

また、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の導入阻止や、暗号資産の自己管理権保護も大きな焦点となる。木曜日にはビットコイン価格が急騰し、今回の政策転換が市場に与える影響の大きさを浮き彫りにした。トランプ政権の暗号資産政策は今後、さらに具体的な行動を伴う形で進展すると予想される。

トランプ政権が模索する国家戦略としてのデジタル資産備蓄の意図

トランプ大統領が発令した今回の大統領令では、「戦略的な国家デジタル資産の備蓄」の可能性が明記されている。この表現は、暗号資産が米国の経済的、技術的優位性を確保するための国家戦略として位置付けられ始めたことを示唆するものである。これまでビットコインやその他の暗号資産は主に民間主導で利用されてきたが、今回の指針は国家としての関与を示す新たな段階を明確にしている。

特に、選挙公約の一環として挙げられていたビットコインの国家準備金の設立案が再び浮上しており、これはグローバルなデジタル金融競争の中でアメリカが主導権を握ることを目指す動きと解釈される。ただし、この方針が具体的な政策として進むには、多くの技術的、規制的課題が残されていることも事実である。今後の政策展開次第では、国際的な金融市場におけるアメリカの影響力が大きく変動する可能性がある。

一方で、暗号資産の分散性を擁護する専門家の中には、国家備蓄が資産価格や市場流動性に与える影響を懸念する声もある。今回の取り組みはアメリカのデジタル経済の方向性を大きく変える可能性があり、他国の政策にも波及効果を及ぼすと予想される。

中央銀行デジタル通貨(CBDC)禁止の背景とその影響

中央銀行デジタル通貨(CBDC)の導入を阻止する姿勢を鮮明にした点は、今回の大統領令のもう一つの注目点である。CBDCは、国家が発行するデジタル通貨として、金融取引の効率化や透明性の向上を目的としている。しかしながら、共和党員を中心にプライバシーや政府の過度な管理に対する懸念が根強く、これが禁止方針の背景にあると考えられる。

CBDCの導入が停止される一方で、トランプ政権は個人や企業による暗号資産の自己管理やマイニング、取引を積極的に保護し、促進する方針を示している。これは民間セクターの革新を促し、中央集権的な金融システムではなく分散型金融(DeFi)の発展を優先する意図と一致している。

ただし、この動きが米国全体の金融競争力にどう影響を及ぼすかについては議論の余地がある。多くの国々がCBDCの研究と導入を進める中で、アメリカがその流れに逆行することで競争力を失う可能性が指摘されている。同時に、今回の方針が暗号資産の分野におけるアメリカのリーダーシップ強化を目指すものであるならば、代替的な政策提案の具体性が求められるだろう。

デジタル金融政策における政権内外の権力構造の変化

今回の大統領令では、暗号資産政策を助言する大統領ワーキンググループが設立され、シリコンバレーのデビッド・サックス氏がそのリーダーとして選ばれた。この決定は、技術革新に通じた民間セクターの専門家が政策形成の中心に配置されることで、政府と民間の連携を強化する意図を示している。さらに、元フットボール選手のボー・ハインズ氏が日々の運営を担当することが発表されており、異業種からの多様な知見が持ち込まれることとなる。

一方で、このグループには助言権のみが与えられており、最終的な意思決定は大統領や議会に委ねられる。この点は政策実行のスピードや効率性に影響を与える可能性があるとされる。また、議会ではシンシア・ルミス上院議員が推進する「ビットコイン法」が議題に上がっており、地方自治体の取り組みも絡み合う形で今後の政策に影響を及ぼすだろう。

今回の大統領令が示すように、アメリカのデジタル金融政策は政権の方向性や専門家の影響を大きく受ける動態的な分野である。これらの要因がどのように統合され、具体的な政策として結実するかが今後の注目点となる。

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